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ルフィは好きな人がいるのかもしれない。可愛いナミや、美人なロビン、確かすごく気に入っていたビビちゃんとか、それともマキノさんだったり。考えるだけで腹が立つが、美人に囲まれれば好きになってもおかしくない。
珍しく誰もいないダイニングでくつろいでいると、髪が濡れたままのルフィが入ってきた。あんなことがあった後で気まずいけれど、私は笑いかける。
「拭いてあげる。」
「おう。」
ルフィはいつも普通に接してくれてる。この関係が嬉しいようで辛い。
椅子に座ったルフィの後ろに立ち、真っ白なバスタオルを受け取り、髪をわしゃわしゃと拭く。
「ルフィはさ、好きな人がいるの?」
思い切って聞いてみた。案外すんなりと聞けた気がする。その答え次第では、私は、どうなるんだろう。
「わからねェ。」
「分からない?」
「………好きってなんなんだろうな」
ルフィはたまにすごく難しい疑問をもつ。答えを知ろうとはしないみたいだけど、ポツリと呟くんだ。この答えは私にもよくわからない。好きなのに、他の男に抱かれて愛されて、埋めようとしている私には本気の恋なんて分からない。それでも、ルフィの顔や声が離れなかったんだよ。
「好きって、その人のことが頭から離れなくなるんだと思うよ。ずっと、離れないの。」
その人が私はルフィなだけで、ルフィはどうなんだろう。ルフィはんーーーと唸りながら首を捻る。
「じゃあ◯◯はおれのことが離れねェのか」
「そ、そうだけど……言わないでよ」
好きな人本人に言われたくはないが、離れないのは事実だ。ルフィの表情は後ろからでは見えないから、何を考えているのか分からない。
「おれも、離れねェのかな」
ポツリ、とそう呟いた。
離れない人がいるということだろう。自分で聞いておいて、私の心を抉るように刺してきた。吐き気が襲い掛かる。
応援しよう、なんて優しい女じゃない。そのルフィが惚れてる女からルフィを奪いたい。私を見てほしいよ。
「ルフィ、ねェ。」
「あ、おれ行かなきゃ。ナミに収穫頼まれてたんだった。」
勘が鋭いのか、避けられてしまった。ルフィが好きな人って、誰なんだろう。お願いだから、ルフィを好きにならないで。私からルフィを取らないで。
(後ろに立つ◯◯から匂う香りは)
(昔と全然変わってない)
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