10
お風呂から上がって、濡れた髪を拭く。チョッパーは自らの体を振るだけで水が飛ぶので便利だなぁと思いながら見つめる。水を落として満足したように笑うと先にどこかに行ってしまった。
一人になると考えてしまう。湿気が篭った脱衣所で考えるのはルフィのこと。チョッパーの言葉がどういう意味なのかサッパリわからない。
「うおっ、わ!わりィ!」
突然、扉が開いたと思ったら顔を覗かせたのはルフィだった。タオル一枚の私をみて顔を赤くして扉を閉じる。照れてるのかな、可愛い。好き。
「ルフィ、いいよ。タオル付けてるし。」
「そういう問題じゃねェ。」
「え?」
「いいから服着ろっ!」
渋々タオルを取って服を着てからルフィが待つ扉を開けた。
「◯◯、髪伸びたな。」
「ずっと切ってないなぁ。切ろうかな。」
「おれはこっちの方が好きだぞ」
ズルいなァ。そんなこと言われたらもう切れないじゃないか。ルフィはまだ湿っている私の髪に触れた。その手が、くすぐったい。その手に私の手を重ねるとルフィは真っ直ぐこっちを見てきた。
「今までも…………」
「ん?」
「こうやって、色んなヤツに触れてきたのか?」
「…………………うん。」
嘘をついても仕方がない、私は素直に頷く。するとルフィはハァァァと大きなため息をついた。なんだろう。
「なんでそうやって………自分から汚れようとするんだよ。」
「それ……は………」
言葉が出てこない。寂しさを埋めるためだよ、なんて言えるわけがなかった。もうクズだと言うことはバレてるはずなのに、また悪く思われるのが怖い。
「おれが好きなら、おれだけ見とけよ。」
矛盾してる。私なんか好きじゃないくせに、どうしてすぐ期待させること言うの。
ルフィが振り向いてくれないから、私は………私は………。
悔しくて涙が溢れ出してきた。涙は女の武器だから、こういう時くらい抱きしめて。優しくして。そう思ったのに、ルフィは涙をそっと拭うと私を脱衣所から背中を押して追い出した。涙は拭ってくれるくせに、なにも言葉はかけてくれないのね。
(シャワーの音に紛れて泣き声が聞こえた)
(それでもおれは動けなかった)
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