小説 | ナノ



【フラッシュブラック】
※ヒロインは子どもファイター設定


「あぁ〜…つまんない…」
リビングの窓から見える景色に、大きなため息をついたのはなまえ。今日は丸一日乱闘の予定がないので、どこかに出掛けようと楽しみにしていたのだが、外の天気は生憎の雨。
雨、というよりは…豪雨。バケツをひっくり返したような大雨と、木が吹き飛ばされそうな突風。こんな状況では傘を差してお出かけというわけにもいかない。

「退屈だからってみんな乱闘しに行っちゃったし…何しよう…」
なまえは子どもながらファイターなわけだが、持っている魔力にムラがあるため毎日乱闘に参加するわけにはいかないのだ。他のメンバーを羨ましく思いながら、外をぼんやりと見つめていた。
すると、背後から大きな足音。

「何しとるんだ?」
「あ、大王だ!」
「んー?他の奴らが見当たらんぞい」
大きな体、大きなハンマー、デデデ大王である。自分以外の者を発見して喜ぶなまえ。

「大王は乱闘行ってなかったの?」
「ああ、ちょいと書斎で調べものしておった。ということは、他の奴らは皆乱闘か。騒がしい奴らだ」
ソファーに座ったデデデのお腹にダイブするなまえを、彼は特別嫌がっているようには見えない。見た目通りというか何というか、デデデは子ども好きかつ可愛いもの好きなのである。

「なまえはこんな所に一人で何しとったんだ?」
「お外が雨で残念だなぁーって見てたの」
「そうか。今日は乱闘は休みか」
「うん」
「ならワシもここに居るぞい。一人ぼっちは退屈だろう」
そう言ってハンマーを床に置いたデデデに、なまえはニコリと笑いかける。何かと自分を構ってくれるデデデが、なまえは大好きなのだ。

「さて、何をするかのう…」
「うんとね、本読んでほしいな」
「お安いご用だぞい」
最初は読むつもりでいたが、いつの間にかソファーの片隅に放置されていた本を手に取るなまえ。それを受け取ると、デデデはなまえをお腹の前に座らせてそれを読み始めた。

「昔々あるところに…」
その時である。

ドガァアァアアン!!という爆音と共に、屋敷は真っ暗になってしまったのだ。
「きゃあぁぁあ!!なになに?!」
「うむ、停電ぞい。雷でも落ちたか」
デデデの腕の中で、なまえは悲鳴を上げる。デデデの方は冷静に事態を把握しているようだが、驚きと恐怖に襲われているなまえにはその声は届かないようだ。

「大王!こわいよぉ〜!!」
「落ち着け落ち着け。ワシがついとるぞい」
無我夢中で抱きついてくるなまえの背中を優しくポンポンと叩く。いつも通りのデデデの声を聞いて、なまえにも少しだけ余裕が生まれたらしい
こぼれる涙を拭って、キョロキョロと辺りを見回してみる。暗いといってもまだ夜ではない。ぼんやりと周りの景色が見えてきた。

「大王がいなかったら、こわくて死んじゃってたよ…」
「それは危ない所だったぞい…。なまえが死んだら皆悲しむぞい」
もちろん、ワシもな。そんな言葉に、なまえは驚くほどの安堵を覚えた。大切とか必要とか、そういう次元の話はまだよくわからない年のなまえの幼い心にも、その言葉はとても優しく響いたのだった。

「今日の大王なんかカッコいい」
「フハハッ、今日だけか?」
まだ背中を優しく叩く手に誘われるように、なまえは睡魔が囁きかけてくるのを感じた。大きなお腹も、自分を抱きかかえてくれる腕も温かくて、瞼が重くなる。まだ外では雷がゴロゴロと鳴っているが、優しい大王のおかげでなまえは安心して夢の世界へと旅立っていった。




「なまえ?寝てしもうたか。なんとまぁ、可愛い寝顔だぞい」
「あー!デデデがなまえにセクハラしてる!」
「…人聞きの悪いこと言うでない。そして声が大きいぞい、マルス」
「ずるい、僕もなまえに触ってあわよくばイケナイこととかしたい!」
「……なまえが寝てる時でよかったぞい…」




13.08.13
さりげなく王子が変態


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