小説 | ナノ



【OATH】
※百合注意


「…なまえ……?」
「っ…!」
いつものリビングに姿がないと思って探してみたら、中庭の椅子に座っているなまえを見付けた。
声を掛けると、ビクリと震えて振り返るなまえ。その瞳に光っている物を無視することなんて、私にはできなかった。

「どうしたんです?!具合でも…」
「だ、いじょうぶ…!ごめんね…ちょっと……っ」
慌てて近付いて、顔を覗き込む。彼女はそれを避けるように、俯いてゴシゴシと目を擦った。けれど、そんな事したって濡れている視線は誤魔化せない。
無理をして笑おうとしているのが、バレバレで。最近そんな表情しか見ていない、という結論。

こんなにも弱さを剥き出しにしているなまえは、初めてだった。
いつだって明るくて、笑顔を絶やさずにいる彼女だから。今の目の前の情景は、余計に悲しげに私には見えた。

「うん、ちょっと…変だね……止まんない。…っ、ぅ…!」
「なまえ…」
何とか必死に強い自分を保とうとしているなまえは、複雑な感情が交錯した瞳で、痛々しく笑っていた。
その理由を、本当は知っている私。見て見ぬフリばかりしていたけれど、もうそれも無理なのかもしれない。

気付けば、その細い体を抱き締めていた。私のような非力な者であっても、力を強めたら壊れてしまいそうな脆弱性を感じて、心が痛んだ。

こんなにも人を守りたいと思ったのは、初めてで…。

「悲しい時は、泣いて良いのですよ…」
「……ぜる、だぁ…っ!…」
「私は、なまえの笑ってる顔が…」

『好き、です』
飲み込んだ言葉。堰を切った涙。
心の中で、懸命に唱えた願い。
また、笑って下さい…と。

「私は、なまえを守れる人になります」
「……っ…ふふ…ゼルダは、まっすぐ…だね…」
何処か幼さの残る口調と共に、なまえは最後の涙を拭った。そして弱々しくも美しく微笑むその姿に、ようやく私は安堵を覚えた。
その笑顔がいつもの輝きを取り戻すまで、私はずっと傍にいようと、独り心の中で誓った。

魔法の呪文のように唱える。
小さく、聞こえないように。

『好き、です』と。



13.11.09
アンケート第1位ゼルダ組より
ラストは姫に飾ってもらいましょ!

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