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【横暴グルメ】


風呂から上がって髪を拭きながらペタペタとスリッパで自室に移動する。そこでは俺より先に入浴を済ませていたなまえが、ベッドに寝転がっていた。
ちゃんと髪も拭かずに、本に熱中している様子。

「あ、おかえり」
「おー。乾かさないと髪傷むぞ」
「だって面倒なんだもん」
「ったく…。ほら」
このやり取りも、もう数え切れないくらい行った。なまえは女なのに自分の身形にはとかく無頓着だ。
横着はよくないと、ドライヤーをコンセントで接続。最初は驚いたが、なかなか便利な機械だと思う。俺がベッドに上がると、なまえは起き上がって俺に体を預けてくる。
もう習慣みたいなもので、俺はその小さな背中を見ながら濡れたままのなまえの髪をドライヤーで乾かしていく。端から見たら、奇妙な光景だろうな。

「よし、完成」
「ありがと」
しばらくしたら、漆黒の髪はサラサラに乾いた。手入れを全くしていない割には、指通りがよくて滑らかな髪。
温風が止むと、なまえは満足そうに笑ってまた布団に寝ころぶ。

腕を立てたうつ伏せの状態で、曲げた足がゆらゆら揺れている。機嫌がいい時のなまえの動作だ。
俺は何となく退屈で、本ばかり見ているなまえに少しだけ不満を抱く。このところ乱闘がたて込んでたせいで、こうして部屋で二人きりになるなんて久しぶりだから。正直、構ってほしいわけ。

「なまえってさぁ」
「んー?」
「食べたら美味いのかな?」
「んー……って、はぁ?!」
その驚きが本格的なものになる前に、揺れている足を食べた。食べた、というか、指を口に含んだ。
ボディーソープか何かの甘い匂いが鼻をくすぐる。味はない、当然か。

「ちょ、ちょっと何してんの?!」
「うん?なまえをつまみ食い」
「やめてよー!うわ、ッ!」
信じられないといった様子でバタバタ暴れられる前に、舌でベロリと一舐め。すると、大きく目を開いたなまえの全身が震えた。
仰向けの体勢になったなまえを見下ろすと、とんでもなく恥ずかしいらしく顔を赤くして目にはうっすらと涙が溜まっている。

「感じる?」
「――っ!!ばか、やだ」
「うそつき」
指と指の間を舐め、小さな爪を舐め、骨の浮く白い甲にキスをした。比較的柔らかい裏や踵を甘く噛むと、なまえの頬がますます赤くなっていくのが見える。
図星をつかれたように視線を逸らそうとするところを逃がさずに覆い被さって、挑発的な笑み。

数センチの距離で視線がかち合って、一瞬の無言。その後に濡れた目をそっと伏せるなまえ。異様なまでに色っぽいと、俺は息を飲んだ。
ああ本当にこのまま喰い殺してしまうかもしれない。不本意ながら獣として冒険していた時に身につけたのか、危険な欲望が顔をのぞかせる。

「なまえ、好き。食べてしまいたいくらい好き」
「…どうぞ」
唇をペロリと舐めて、耳元でそっと囁く。諦めた表情で脱力したなまえは、きっと「食べる」の意味を勘違いしている。
訂正は、しないけどさ。




13.11.05
アンケート1位ゼルダ組より
作品第3弾はリンク、みんなお待たせ!←



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