小説 | ナノ



【誰が為に強く在るか】
※ヒロインはスマ屋敷の使用人設定


「メタナイトさん」
「ああ、なまえか。どうした?」
「剣術を教えていただけませんか?」


共有スペースである書斎で本を読んでいたら、使用人のなまえが現れてそんなことを言うものだから、少々面食らってしまった。

「何故そのようなことを。お前には必要ないだろう」
なまえはファイターではない。どこにでもいる普通の人間だ。戦ったことはおろか、剣を握った経験さえないであろうに。

「私は、悔しいのです…」
「悔しい?」
「皆さんのお役に立たなければならない立場の私が、いつも皆さんに助けていただいてばかりで…」
俯き、悲しげな瞳でそう語るなまえ。確かに、この世界に完全な平和などないのかもしれない。屋敷の周りは森。突然魔物が現れることも少なくはないのだ。

「だから、私も…少しでも皆さんを守れるように…」
「なまえ、やめておけ。お前には必要のないことだ」
「どうしてですか?これ以上、皆さんにご迷惑をかけるわけには…!」
見れば、その手には細身の剣が。マスターハンドにでももらったのだろうか。しかしやはり、何かを傷つけることとは縁遠いその白く華奢な手には不釣り合いすぎる。

私は読んでいた本を閉じ、彼女を手招きした。素直に隣へと腰掛けたところを見て、口を開く。
「なまえは、誰かに守られることは不服か?」
「いえ、そんなことはありません…!でも、」
「皆、お前が大切だからそうしているのだ。義理などではない、それだけはわかるな?」
「そ、れは……はい」
頷いてはいるものの、まだ納得がいっていない様子のなまえは、じっと私を見つめている。

「お前を戦いに巻き込みたくはない。大切な者が傷つくことは、耐え難いことだ」

私たちファイターは、誰かを守るために強くなれる。お前が危ない目にあわないよう、傍に居よう。傷付かぬよう、この剣を振るおう。逆に言えば、私にはそれしかできないのだから。

「だから、私の役目を奪わないでくれ」
「……はい」
話し終えると、なまえはとても穏やかに微笑んでくれた。どうやらわかってくれたようだ。
いやしかし、普段口にしないようなことばかり言ったせいか顔が熱い…。仮面に助けられたな…。

「メタナイトさんは、優しい方ですね」
「…そう、か?」
「はい。それに…」
「?」

「私のことを『大切』と言っていただいて、嬉しかったです」
「っ、それは……!」
ああ、なんということだ。私はとんでもないことを言ってしまっていたようだ。

「そうだ。私、これから街へ買い出しに行くんですが…」
「……なら、私も一緒に行こう」
「はい」
立ち上がったなまえについて、私も歩き出す。先程までの悲しげな色は消え、その瞳はとても優しい。

この笑顔が見れるのであれば、私はお前を守るために幾度だって戦おう。もう二度とその瞳が悲しみで曇らぬように。




13.08.09
途中からキャラがブレとるな←


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