小説 | ナノ



【It's not bad.】


「もう寝ろって」
「やだ」

「寝ろっつーの」
「いーやーだー」
この押し問答は、いつになったら途切れるんだろう。その表情からすると、そう遠くない気はするが。

明日のトーナメントに備えて、部屋でブラスターのメンテナンスをしていた俺。するとそこに突然なまえが現れて、ベッドの上で本を読み始めた。
別に邪魔してくるわけではないから気にはしてなかったんだが、さっきからその頭が眠そうに上下している。
「眠いなら寝ろよ」と俺が言い出したのが、ことの始まりだ。

一向に眠りの世界へ堕ちようとしないなまえは、それでも重そうな目蓋を擦って何とか意識を保とうとしている。

「ファルコが寝るなら私も寝る」
「俺はまだやることがある。眠くもねえしな」
「じゃあ私もまだ寝ない」
「なんだよ…」
そんな会話をしているなまえは、半分は夢の世界に足突っ込んでる感じだ。このまま放っておいても寝ちまうんだろうが、流石に気になることがあって思わず聞いてしまう。

「なあ」
「ん…?なにさ、急に…」

振り返ってその顔を見たら、なまえは眩しそうに瞬きをする動作をした。日頃あまり反抗というものをしないコイツが、こんな時に限って何故こんなに意地を張る必要があるのかがわからない。
ただ単純に降って湧いた疑問を、俺は口にしていた。

「なんで寝るのを嫌がってんだ?」
「…えっ。そ、そんなの…」
言えるわけないよ…と、泣きそうな声で呟かれてしまっては、どうしたものかと俺は困惑するばかり。
急にしおらしい態度になったなまえは、眉を下げて俯く。立ち上がって近寄ると、その不安そうな雰囲気が少し濃くなった。

「いや、なんか理由があるのかと思ってよ」
「まぁ、あるっていえばあるけど…でも…」
「なんだそりゃ。余計に気になるだろ」
「ううぅう―…。笑わない……?」
上目でこちらを窺うなまえに、少し悩んだが首を縦に振ることにした。擦りすぎて充血した瞳を覗き込み、言葉を待つ。
しばらくの沈黙の後、なまえは小さく、消え入る直前の音量で呟いた。

「ゼルダからね、一緒に寝ると、同じ夢…見れるって、きいたから……」
「――………」
「ファルコ、まだ眠くないんでしょ?だから、私だけ寝たら…夢で、一人かもしれないじゃん……」
思っていた以上に可愛い理由を聞いて、口元が弛むのを懸命に抑える。そんな純粋な思考を抱けるなんて、もはや天然記念物だろ。
言ったことを後悔しているような表情のなまえの頭を撫でると、弾かれたようにこちらを見上げてくる。

「作業はヤメだ。俺も寝る」
「……え?」
「同じ夢、見るんだろ?」
「――……うん」
散らかったテーブルの上を片付けながら言えば、後ろから嬉しそうな声。
二人で狭いベッドに寝転べば、恥ずかしそうながらも、最高の笑顔が見れた。たまにはこんな夜も、悪くはねえな。

きっと、幸せな夢が見れることだろう。




13.10.21
なんとなくファルコ夢が書きたくなったので

33 / 113
/

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -