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【恋愛回路】


「フォックスごめん、レンチ取って」
「ああ、はい」
「ありがと」
ここは、屋敷の車庫。ファイターたちの愛用の乗り物が収まっている。
俺の目の前には、熱心ななまえの姿。昨日乱闘で使った時に、想定外の方向に走り出したランドマスターを見てもらってる。
この世界にはスリッピーがいないから、俺とファルコとウルフで何となく整備していたんだが…そろそろガタがきたみたいだ。

なまえはファイターの中で自他共に認める一番の機械オタク。
流石に女の子には重労働だろうと今までは遠慮していたんだけど、昨日の乱闘でのランドマスターの動きを見て、自らメンテナンスをかって出てくれた。

「うーん…」
「どう?」
「やっぱりいろいろ傷んできてるねー。あと、ちょっと歪んでる部品あるかも…うーん…」
フォックス、乗り方荒いもんねーと言われ、流石に苦笑。でも俺よりもファルコの方が荒いと思うんだけど…。アイツのランドマスター大丈夫なのか?

「まあでも、これくらいなら余裕で直せるよ」
「ほんとか?」
「ふふん、私を誰だと思ってんの?」
こちらを振り返って笑うなまえは、何だかとてもいきいきして見えた。
俺たちパイロットは、任務の一環と思って機体や武器のメンテナンスなんかを行う。その点なまえは違って、本当に機械が好きなんだろう。スリッピーもそんな感じなんだよな。

「あ、なまえ」
「ん?」
「ちょっと、動くなよ」
「え……っ!」
なまえの頬についたオイルの汚れを、指で拭おうと手を伸ばす。その瞬間、驚いたのかなまえはビクリと震えて目を強く瞑った。
思っていた以上の反応をされて俺も少し驚いたが、悪戯心が沸き上がるのは止められない。

「汚れ、ついてたから」
「っな、なんだ!びっくりしたぁ!あ、ありがとね…」
一応理由を説明したら、なまえは納得してくれたらしい。でもその顔が赤くなっていることが、俺の自惚れを誘う。

「なんだ、期待した?」
「え…!な、なんのこと?!」
「キスとかさ」
「ばっ…かじゃないの?!ほら、早くそこの部品取って!」
笑って顔を近づけたら、今度は一気に赤くなる。背中を向けられたけど、後ろからでも真っ赤な耳は見えてるんだよな。

「なまえ」
「……なによ」
「ほら、部品」
「あ、うん……っ?!!」
部品を受け取ろうとこちらを見たところを逃さず、頬に触れるだけのキス。目を丸くして呆気に取られていた様子のなまえは、次の瞬間スパナを投げてきた。

「あぶねっ」
「もう!邪魔するならどっか行ってよ!」
「まあまあ」
その真っ赤な顔で怒鳴られても、全然怖くない。暴れるなまえを抱き締めたら、急に諦めたのか静かになった。

「修理進まないんだけど…」
「ゆっくりでいいよ」
「終わらないとフォックス最後の切り札使えないよ?」
「スマッシュボール縛って乱闘するからいいさ」
「…勝手だなぁ」
俺の腕の中でボソボソと呟くなまえを離すのは、惜しいからな。
もうちょっと、照れ屋な恋人との時間を満喫してもバチは当たらないだろ。




13.10.12
ヒロイン、ツンデレ…か?

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