小説 | ナノ



【Secret Sign】
※ヒロインはすま屋敷の使用人設定


「あのー…リンクさーん?」
「んー?」
「あのですね、そのようにくっつかれてますと、私は動けないのですが」
「いいじゃん別に」
「よくないよ!」
…さっきから、ずっとこんな状態。
子どもたちのおやつを用意していたら、突然キッチンに現れたリンクに後ろから抱き締められて早十数分。
何か用かと聞けば「別に」と言われ、ならば放してほしいと言えば「嫌だ」の一点張り。
他人行儀に敬語で窘めても、これといった反応は返ってこないし…。もう、一体なんだっていうの…。

「リンク、私が今何してるかわかってる?」
「ケーキ焼いてる」
「うん正解。もっと正確に言うと、ケーキが焼けるのを待ってる間に洗い物をしてお皿とコップを準備したいわけ」
「そう」
そう、ってこの人は…。普段のイケメン紳士リンクなら、「俺も手伝うよ」って言ってくれるはずなのに。
なんか様子が変だなぁ…どうしたんだろ。

「ねえ、リンク」
「……」
「知っての通り、私って凄く鈍いのよ」
「うん」
冷静に語りかけるようにそう言えば、非難を込めた声音と共にリンクの腕に力がこもった。

「だからね、何か思ってることがあるなら、ちゃんと言ってくれないとわからないの」
「――……」
空気を読むとか、表情でわかるとか、そういったことがとにかく苦手な私。対するリンクは、いろいろなことを笑顔で誤魔化して心に溜め込んでしまう人だったりする。
もしかしたら、そういう気持ちが爆発してしまったのかもしれない。そう思うと、私だって無碍に突っぱねるわけにはいかない。

「話してくれないかな?」
体の前に回っているリンクの手に、自分の手をそっと重ねる。しばらくの無音の後で、言いにくそうな声が耳のすぐそばで聞こえた。

「…なまえが」
「うん」
「なまえが、子どもたちばっかり構うからだろ…」
「…うん?」
一瞬その内容が理解できなかったから反応が遅れてしまった。
ちょ、ちょっと…それってもしかして。

「リンク、それ…ヤキモチ…?」
「…悪いかよ」
うわ、なんか可愛いぞこの人!
恐る恐る声をかけたら、背中から拗ねたような声が。思っていた以上に可愛い理由だったもんだから、表情が緩むのを止められない。

「なんだよ、バカにしてる?」
「いや、うん、バカにしてるっていうより…なんかね、嬉しくて」
「ん?」
「だって、ヤキモチ妬くほど想ってくれてるってことでしょ?」
「そんなの、当たり前だろ…」
腕を解いてリンクと向き合ったら、改めて強く抱き締められた。リンクの匂いを感じて、心地よくて目を閉じる。

「もっと余裕もたないといけないってことは、わかってるんだけど…」
「いいんだよ、リンクは今のままで」
「なまえ…」
大切にされているという実感で、とても幸せな気持ちになれる。
珍しく真剣なリンクの顔が、ゆっくりと近づいてくる。覚悟を決めた私が頷くと、頬に手が添えられて、唇が重な…

「なまえー!おやつおやつー!」
「うわぁ、いい匂い!」
「「!!!」」
お約束というかなんというか、ナイスタイミングで子どもたちがキッチンにわらわらと入ってきた。リンクも私も大慌てで離れて、入り口の方を見る。

「あれ、リンクもいるー」
「ねえなまえー、今日のおやつはー?」
「えーと、今日はガトーショコラだよ!」
「やったー!」
何とか普段通りの声で対応して、子どもたちに先に手を洗うようにと指示をする。シンクで順番に手を洗う彼らはとても微笑ましい。

「なまえ」
「ん?なに……っ!?」
ポンと肩を叩かれて振り返ったら、触れるだけの不意打ちのキス。幸いにも子どもたちは背中を向けていたから、気づかれずにすんだ…。

「り、リン…」
「続きは、後でな」
「っ!」
真っ赤になった私にそう囁きかけて、リンクはキッチンから出ていった。ああもう顔が熱い…!

「なまえどうしたのー?」
「い、いや!なんでもないよ!」
頑張って平生を装ったのに、結局気づかれてからかわれてしまった…。子どもの勘て恐ろしいわ…。




13.09.21
1600番キリリク「リンク嫉妬甘夢」
最後がよくわからん感じですが…


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