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【騎士様の逆襲】
※擬人化注意


そろり、そろり。
足音を消して、部屋の中に浸入成功。

ここはどこかと言いますと、屋敷にある共有の書斎。まぁ、小さな図書館みたいな感じ。私は今その中でスニーキングミッションの真っ最中。
ターゲットは…いた。ソファーで本を読んでいる様子のメタナイト。私が今いる場所からだと、後ろ姿しか見えないけど。

任務の内容は、その仮面を取ること。そして子ども組の所まで連れていく。さっきかくれんぼやってて、全員見つけられなかった私に与えられた罰ゲームです…。
失敗したら怒られそうだし、かといって子どもたちは楽しみにしてるらしいからなぁ…。私は何度か見たことあるけど、メタナイトの素顔を見たことある人って少ないらしいから。
しかも、最近マスターに薬盛られて人型になったメタナイト。その素顔に至っては、私以外には見た人いないんじゃないかな?

「……?」
彼の後ろ姿をしばらく観察していた私は、気付いた。その頭が、一定の速度で前後に動いている。

もしかしてメタナイト…寝てる?
ならチャンスだわ!こっそり近寄って仮面外して、子どもたちをここに連れてくれば作戦終了!

「……よし」
気合いを入れて、歩みを進める。物音を立てないように慎重に距離を詰めて、ソファーの前に到達。

「………」
やっぱり、寝てる。足の上に開かれたままの本を置いて、こくりこくりと首を動かして。これはかなりラッキー!勝利の女神は私に味方したわ!

そーっと…そーっと…。
腕を伸ばして、仮面に触れる。そしてゆっくりと外すと、その素顔が見え…

ガシッ

「っ?!!」
「寝込みを襲うのは、卑怯だぞ?」
お、起きた―――!!!
手首を突然掴まれて、全身がビクッと震えた。目を開いてこちらを見るメタナイトに、背中を冷や汗が伝うのがわかった。

「私の仮面に何か用か?」
「めめめ、メタナイト…!いや…えっとこれにはわけが…!」
「ほう、聞かせてもらおうか」
「え―――と…久しぶりに、メタナイトの顔が見たいなぁ〜なんて、思って…」
「そうか……なら」
仮面を持ったままワタワタする私に、彼は薄く笑って。一瞬の浮遊感の後、世界が回った。

「…へ?」
「ならば、存分に見るといい」
何が起こったのかわからなかったけど、視界にはメタナイトの顔のアップ。背中の柔らかい感触がソファーであると気づいて、ようやく自分が押し倒されているんだとわかった。

「め、メタナイト…?」
「顔が見たいのだろ?」
「そうだけど…!」
近いんですよ!息が当たるほどの近さですよ!
滅多に見れないその顔が文字通り目と鼻の先にあるという事実で、一気に心臓がうるさくなる。

「もう、もう大丈夫!満足したから!」
「遠慮するな」
「いやいやいや、遠慮っていうか…!」
あなた自分のかっこよさわかってないでしょ?!私もう心臓もたないよ!顔真っ赤になってるの見えてるでしょ!
逃げようにも、さすがにこの体勢ではどうしようもない。整った顔にじっと見詰められて、慌てている私はオドオドと視線を彷徨わせるだけ。

「どうした、顔が赤いぞ」
「いや、だって…!」
するりと、伸びてきた手が私の頬を撫でる。その手はゆっくりと頬から唇へと移動して…。そこに、優しいキスが降ってきた。

「!!」
メタナイトからキスしてきたのは初めてで、とにかく驚いた私は息を飲んだ。しかも戯れのようなそれではなくて、舌が滑り込んできた。
舌を絡め取られて翻弄されて、頭がボーッとする。

「ん〜!っ……!ぷはぁ!」
「この程度で音を上げていては先がもたないな」
「さ、先って…!」
息が苦しくなったところでようやく解放されたかと思えば、今度は首筋に啄むようなキスをされて…。なんかいつもとキャラ違う気がするよメタナイトさん!?

「も、もうほんとに勘弁して…!仮面返すから!」
「断る」
「ええ?!だってまだ昼だし…!」
「ほう、夜ならいいのか」
「……っ!」
墓穴掘った――!!!
さらに慌て出す私を見下ろしているメタナイトは、余裕の表情を崩さない。普段は絶対に逆の立場なのにな…。
すると、言葉を探して必死に考え込む私の頭を、優しい手がポンポンと撫でた。

「冗談だ」
「え?」
そう言って意外にあっさりと私の上から退き、立ち上がって仮面をつけるメタナイトに拍子抜け。
起き上がってソファーに座り直したけど、さっきのキスの余韻なのかまだ頭がフワフワする。いきなり激しいのぶちかまされたからかな。

「…メタナイトの冗談って、冗談に聞こえない」
「まぁ半分以上は本気だからな」
「――……」
「からかい甲斐のある奴だ」
「もー!」
隣に座ってきた彼に拳を入れようとしたが、あっさり受け止められた。仮面で表情は見えなくなってしまったけど、想像つくわ。

「うー…それにしても残念。せっかく子どもたちにメタナイトの素顔見せてあげれると思ったのに…」
「そんなの、知ってるのはなまえだけでいいだろう」
「…またさらっとかっこいいこと言っちゃってさ……」
大好きだっつーの!なんてことはなかなか言えないから、心の中で呟いた。

「それにしても、メタナイトの反射神経ってすごいね。あのタイミングで起きれるなんて」
「なまえが卑怯な手を使うなら、私も使わせてもらったまでだ」
「ん?……ま、まさか…?!」
「私を起こさないようにするなら、完全に気配を消さなければな」
狸寝入りかぁ!?くっそこのイケメンめ!私が書斎に入っていた時点で目が覚めてたってことですか…。

「やっぱりメタナイトには敵わないなぁ」
「いつもやられてばかりでは癪なのでな」
まぁ、なかなか見れないメタナイトが見れたからよしとするかな。
きっと子どもたちにはブーブー言われるんだろうけどさ。


(とにかく、今晩覚悟しておくんだな)
(?!!)




13.09.18
1400番キリリク「メタナイト甘夢」
遅くなりました…リクエストありがとうございました!


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