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【By a fluke…?】


「……あ」
「あ?」
部屋の中でブラスターの手入れをしていたら、不意に背後から声が上がる。そちらを振り向けば、視界に飛び込む赤。
愛用の弓矢の手入れをしていたはずのなまえの指から、ダラダラと出血している。

「おい…!どうしたんだよ?」
「いつ切ったんだろ。全然気付かなかった…」
とりあえず、近くにあったティッシュを持って駆け寄る。当の本人はというと、呑気にその指を観察している。

「久々に指なんて切ったなー」
「お前なぁ…」
なんだよその感想。そんなことを言ってるだけじゃ血は止まんねえだろ。

「ほら、早く止血しろ」
「あ、ありがとファルコ」
「道具借りてくるから押さえてろよ」
相当深く切っているらしく、ティッシュは見る見る色を変えていく。走ってリビングにあった共有の救急箱を持って戻ると、なまえは一応ちゃんと手を上げて止血作業をしていた。

「痛くねえのか?」
「いやーあんまり」
それでもまだ平然としているなまえ。俺は結構本気で心配してるってのに、なんだよその緊張感のなさは。

「なんでかな?痛みに鈍感なのかな」
真っ赤になったティッシュを外して傷を見れば、強く押さえていたおかげで出血の勢いはもう収まっている。
まぁ、これだけキレイに真っ直ぐ切れたら、痛みは少ねえだろうな。そう思ったが、嫌に冷静ななまえに少しだけ腹が立ったから敢えてからかってみることにした。
本人がこんなふうに怪我なんてどこ吹く風なのに、俺だけ慌ててたらバカみてえじゃねえか。

「夜はあんなに敏感なのにな」
「っ?!なに…っか、関係ないでしょ!!」
「大声出すと傷開くぞ。大人しくしてろ」
「むー…」
思っていた以上に動揺した答えが返ってきて口角が上がる。俺のその様子が気にくわなかったのか、なまえは露骨に不満そうに頬を膨らませて拗ねる仕草。
真っ赤な顔でそんなことされても、俺を満足させるだけだけどな。

「ほら、こんなもんだろ」
「なんか…大袈裟じゃない?」
ガーゼとテーピングで固められた自分の指に苦笑するなまえ。だが俺は譲らねえぞ。

「このぐらいやっとかねぇと、お前バカだから指動かして傷開いちまうだろ。完全にくっつくまで我慢しろ」
「……うう、言い返せない…」
過去に足を骨折してるの忘れて階段から飛び降りた前科持ちには、反論の余地などない。いつもの二倍以上の大きさになった自分の指をじっと見詰めて、なまえは顔をしかめた。

「でも、不便だなぁ。利き手の親指かあ…」
「そりゃそうだな。まぁ、なんか代われることがあったら代わるから言えよ」
「…ファルコ、優しいね。どうしたの」
「あ?心配しちゃいけねえってのか」
「いやいや!嬉しいよもちろん!」
ブンブンと首を振るなまえの頭に手を置いて、髪の毛を大雑把に撫でる。途端に大人しくなって俯く顔を覗き込めば、頬を染めて目を泳がせている。

「なんだ、照れてんのか」
「だって!…ずるいよ、ファルコかっこいいんだもん…」
ほんとにコイツは、俺を煽るのが上手い。隣に座った俺の方に体重をかけて凭れてくる体を抱き締めると、なまえがくすぐったそうに笑った。

「ふふっ、こんな優しいファルコが見れるなんてね。怪我の巧妙っていうのかな?」
「ふん、言ってろ」
否定してもよかったが、なまえが楽しそうだからまあいいか。とりあえず、コイツの傷が治るまでは傍にいてやるとするかな。




13.09.11
1000番キリリクのファルコ夢でした
少しでも喜んでいただければ幸いです!



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