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【シュガーベイビー】


いい天気に誘われて、庭の木陰で一眠りしていた。不意に気配を感じて目を覚ましたら、何かが俺に触れているのがわかった。

「…なまえか」
隣を見たら、俺の体に凭れて眠りこけているなまえがいた。ぽつりと呟いた俺の声に、その長い耳がピクリと動く。

「――…ん、」
「起きたか?」
「んー、ふぉ…くす?」
うっすらと開かれた瞳でこちらを見る。まだ寝ぼけているようだ。

「何してたんだ?」
「うーん…ふぉっくすさがしてたら…きもちよさそうにねてたからー…つい…」
髪を撫でると、舌足らずな声が返ってきた。甘えるように擦り寄ってくるなまえを抱き締める。

「ふぉっくす…お日さまのにおいする…」
首元に顔を埋めてすんすんと鼻を鳴らすなまえのその仕草が、やけに幼くて笑みが零れる。俺そんなに長く寝てたっけな。

「なまえは花の匂いするな」
「うん…子どもたちとね、お花畑いってたから」
なるほどな。そう言えば今朝サンドイッチ大量に作ってた気がする。
甘い花の匂いがするなまえの体は太陽の光を浴びていたからか温かくて、とても心地よい。

「そういえば、俺を探してたんだろ?」
「ん?うん」
「何か用か?」
「…用はないけど、ただ会いたいからさがしてたの」
「――…っ」
段々と意識がはっきりしてきたのか、少しずつ滑舌が戻ってきているなまえ。そんななまえから完全な不意打ちをくらって、一気に鼓動が早くなる。
こいつはたまにこうやって一撃必殺で俺の心臓に悪いこと言ってくる。しかも本人はいたって無自覚だから余計たちが悪い。

「フォックス顔赤いよ」
「…なまえのせいだろ」
「わたし?」
「ああー、もう…」
ほら、そんなふうに首を傾げる仕草まで…。いっそ全て計算尽くだったら悪態の一つでもつけるのにな。子どもみたいに、純粋すぎるんだ。(まぁそんなところも好きなわけなんだけど!)

「かっこ悪いじゃんか、俺…」
「ん?」
「俺ばっかりこんなドキドキしてさ」
「フォックスだけじゃないよー」
そう言って、強く強く抱きついてくるなまえ。何事かと思って固まっていたら、触れあった部分から聞こえてくる音に気づく。

「ほらね?」
トクントクンと早鐘を打つのは、なまえの左胸。俺と同じくらいのスピードで、忙しそうに心臓が動いているのがわかる。

「私もちゃんとドキドキしてるよ。フォックスのこと、好きだもん」
「お互い様ってか」
「そうそう。きっとおんなじくらい好きなんだね」
ニコリと笑ってみせるなまえに、またドキリとさせられる。いつかこの不意打ちに耐えられなくて心臓破裂するんじゃないか、俺…。

「好きの度合いは同じかもしれないけど、多分お前の方が一枚上手だよ」
「?」
理解できない様子のなまえに、その意味はまだ教えないでおこうかな。なんか、負けた気がするし。




13.09.04
どこで終わったらいいのかわからない…orz


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