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ぐううう〜。
久しぶりのお風呂ですっきりして、リビングに行くとご飯のいいにおいがした。台所では赤崎さんが振るうフライパンが、じゅうじゅうと美味しそうな音を立てている。
「お腹空いたねえ」
「うん、お腹空いたねえ」
最近まともな食事をしていなかった僕たちは、それでも身体が不思議と順応して、ある程度お腹が空きすぎるともう「お腹が空いた」という感覚がなくなっていた。
それが、音とにおいに刺激されて弾けたようだ。
「ごめんね、今持ってくから座ってて」
赤崎さんがそう言った。でも、テーブルの上にはもういくつも料理が出ていて、どれも美味しそうだった。弟も僕も、待てをされた犬みたいに、じっと料理を見つめて待った。
「はい、お待たせ。それじゃあさっそく、食べようか」
最後の一品がテーブルに置かれて、僕も弟も我慢の限界だった。
「いただきます」
「いただきます!」
「いただきます!!」
サラダ、唐揚げ、お刺身、冷しゃぶ、天ぷら、お味噌汁。なにより白いご飯が美味しかった。
僕も弟もはしたないくらいがっついて食べていた。
僕は泣きながら食べていた。ご飯が温かくて、おいしくて。
赤崎さんはどう思っただろう。
どうして優しくしてくれるんだろう。
でも、今は何も考えられないくらい、お腹いっぱいになるまで食べ物を口に入れた。
食後にはスイカを切って出してくれた。
「夏と言えばスイカだなっ!て思って、買ったんだ」
最低な僕の夏休みが、今日ばかりは、最高の一日になった。
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