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 気が済むまでした後、その凄惨な様子に古佐治は血の気が引いた。ベルトで拘束された手首は擦れて血を流し、散々性器で貫いた秘部も精液と血液と排泄物で汚れている。
 いつから泣いていたのか、事を終えた今も二歹は啜り泣いている。そんな姿に、また熱が上がる。
 本当に壊してしまう、いっそ壊してしまいたい、腹の底に眠っていたどす黒い感情が顔を出す。グッと飲み込み、一つ深呼吸をした。なんとか理性が欲望を抑え込むのを待って、ようやく二歹の拘束を解いてやる。
 痛々しい真っ赤な痕に、脳の奥がカッと熱くなる。加虐心がひたすらに煽られていく。この人にこれ以上触れては、本当にもう抑えが効かなくなるかもしれない。
 今怖いのは、自分自身の残虐性だった。
「…………」
 なんと言葉をかけたらいいのか、そんな余裕すらない。古佐治は二歹から目を逸らし、部屋から出て浴室へ。
 冷たいシャワーを頭から浴びて頭を冷やそうとしても、目をつぶると三月の顔ばかり浮かんだ。どれだけあいつの事が好きなんだ俺は、自嘲しても何にもならない。
 風呂から出たら、二歹に消えてて欲しい。とても自己中心的な考えだったが、自分のためにも二歹のためにもそれが一番だった。
 まったくスッキリすることなく、浴室から出てタオルだけ腰に巻く。廊下に出て玄関をチラリと見ると、靴はまだある。古佐治は、二歹のいる寝室の扉の前でため息を吐く。
 こんなに気が重い理由はわかっている。優しさのカケラもない抱き方、親友の兄を犯した事実。
 なにより、二歹に三月を重ねて無理矢理に抱くシチュエーションに興奮していた自分自身に酷い嫌悪感を覚えた。
 お前のこと考えながらお前の兄貴のこと犯したよ、なんて、死んでも言えない。いや、もう、三月と顔を合わせることも出来ない。

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