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最近の僕はどこかおかしかった。
身体の調子は相変わらずで、時折の咳もいつもの事だった。
けれど衛士さんに触れられると、胸がドキドキとして苦しくなった。耳元で鳴ってるみたいに心臓の音がうるさくなって、そればかりが気になって仕方なくなる。
衛士さんに触れられたところも、熱くて仕方ない。ジンジンと痺れて、身体の熱が上がっていくようだった。
夜だってどうしてか、衛士さんの事ばかり考えてしまって眠れなくなっていた。次の日が待ち遠しくて、胸が苦しくて、衛士さんと話した事を何度も思い出したり、衛士さんが触った背中や腕への熱がぶり返す。
そんな調子だから、衛士さんが現れると頭がうまく働かず、ぼーっとしてしまう。
「だいじょうぶ?」
衛士さんに言われてハッとする。せっかく衛士さんが側にいてくれているのに、ぼーっとしてしまっていた。
「最近、少し疲れてるみたいだけど」
衛士さんの指が僕の前髪を梳いた。それから目の下を指の背で軽く撫でる。僕のドキドキが始まる。
「寝不足?なにか、悩みでもあるのかな」
「あの……」
僕はうまく答えられなかった。なにをどう説明していいのか、言葉にできなかった。
ただ胸が苦しくて、それがそう心地悪くはなくて、衛士さんの側にいるとなにか堪らないものが溢れてきそうだった。
だからずっと、この時が続いてくれたらと思うばかりだった。
「眠たかったら、眠っていいんだよ」
衛士さんの手が背中を撫でる。せっかく衛士さんの側にいるのに、眠るなんてもったいなくて出来なかった。
けれど、いつも僕はいつの間にか眠っていて、気が付けば衛士さんはいなくなっていた。
その瞬間はいつも胸がきゅーっとなって、その時だけは凄く嫌な気分になった。
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