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衛士さんがいてくれるなら、僕はこのままでいたいと、そう思い始めていた。それは良くない事だとわかっていながら、そう思わずにはいられなかった。
なにもない僕の世界には、衛士さんしかなかった。
これまでは、いつ今日が始まり、明日になっていくのか時間の感覚も曖昧だった。いつの間にか時間が過ぎていくのを、遠くで触れる事も出来ず眺めているようだった。
衛士さんが現れてからは、少しずつ変わっていった。
毎日寝て起きるだけの日々が、少しずつ変化していった。寝る前には今日を思い返し、明日が始まるのが、楽しみになっていた。
「けほっ、けほ」
「おはよう、今日は調子、どう?」
僕が咳をすると衛士さんがいつの間にか現れ、優しく背中を撫でてくれる。そうすると僕はホッとする。
「少し、喉が」
「寒くなってきたからね。温かいお茶でも飲もうか」
衛士さんはそう言いながら、僕に一口のお茶をくれる。喉を潤すそれがもっと欲しいと思っていると、衛士さんは繰り返しお茶を注いでくれた。
苦くて、甘い。
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