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 はっ、と目覚めると男はいなくなっていた。
 寂しさのあまりにあんな夢を見るなんて、どうしようもない。僕は、はあとため息をついて目を瞑った。
「けほけほ……」
 いつも通りの小さな咳。
 いつもとは違う、頬に手を触れられる感触。
 ゆっくり目を開くと、男がいた。僕と目が合うとにっこり笑う。僕はまた、泣き出しそうになる。
「喉、渇いたでしょう。お茶飲もうか」
「ん……」
 男が言ったから、頷いて起き上がろうとする前に男が僕に覆いかぶさる。唇に優しい感触があって、それから口の中にお茶の甘い苦味が広がる。
「もっと、いる?」
 窓から差す光で、茶色の柔らかい髪がきらきら輝いて見えた。ああ、この人、すごい綺麗だ。
 男が聞いた意味を一瞬考えたけれど、よくわからなかった。僕はただ頷いて、再びお茶を注がれるのを待った。
 何度も繰り返し、僕たちはキスをした。



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