「いらっしゃーい!何名様ですか?」

「二人で」

こちらどーぞー!!
と威勢のいい声と共にカウンターに通される
面と向かって話すのは何か気まずいしよかった


「・・・・」

『・・・・』

またしても気まずい時間がただ流れる


「あんなとこで何やってたの?」


そして突然話し出す

『え、あーなんとなく気分転換です』

「そう・・・」

『はい・・・』

「・・・・」

静かにお酒を口にする男
会話が全く続かない
何か話さなきゃ

『カカシ先生は何してたんですか?』


「んー、オレはお酒買いに行こうと思って散歩がてらフラフラしてたってとこかな」


『お酒、結構飲まれるんですか?』


「まぁ、毎日ってわけではないけど飲む方かな?ミツバ先生は?」


『私は、弱いんで滅多に飲まないです』


「それお酒だよね、大丈夫なの?」


意外、そんな心配してくれるんだ


『大丈夫です、今日は元々飲みたいなって思ってたんで』


「そっか、あんま無理しないようにね」


『安心してください、迷惑はかけませんから』


いや、そーいう意味で言ったわけじゃなかったんだけど
でも話すと意外と喋るんだね
もっと無口なのかと思っていた

ブランコに座っていた姿を思い出す
普段では想像できないほど
頼りなく見え、寂しそうで
哀愁が漂っていた

いつもは明るく振る舞う人の
陰の一面を見て気になったって理由もあるが

なぜか昔のオレに似ていた気がした


「ま、今日はいろいろ考えずに飲もうじゃない」



酒は飲んでも呑まれるな



ー数時間後


『いや!それでね!!そいつが持ってた本が凄いのなんのって!題名がイチャイチャパラダイス、しかも内容は男とおん「ああーーー、わかった!わかったから。それオレだよね?気づいてる?本人に話してるって」・・えー???』


数時間前の女は何処へやら、この女は誰だ
弱いってここまでとは思わないじゃない

まるで別人のように喋るミツバに動揺が隠せない

「ミツバ先生、そろそろ帰ろうか」


『えーまだ飲み始めたばっかなのにー?』


「もう何時間いると思ってんの、店も閉まるし帰るよ」


『仕方ないなー』

ヨイショっと言いながら立ち上がるミツバだが

ーフラッ『あれ?』ドサッ

『???』
『よいしょっ!!』

ーフラッ ドサッ

『???』
『立てない?』


「はぁー、迷惑かけないって言ってた人はどこ言ったの」
「ほら、おぶってやるから」

『大丈夫ですよ!立てますから!』
ードサッ

何度か立とうと頑張っているが足元がフラついていて立てるわけがない

「コラ、無理しない!」


少し強めに言うと素直に背中に乗るミツバ


『・・・すいません』


「いーよ、それより家どっち?」


『あっちです』

あっちって…アバウトすぎでしょ
とりあえず来た道戻るか



夜も深まり人通りもほとんどない
あんなに喋っていたのが嘘のように全く喋らなくなった背中の女

寝てるのか?

チラッと横目で見ると寝息を立ている
はぁ、、本当に意外な一面だったよ
普段の真面目で冷静な姿からは想像もできない


『・・・とう・・さ・ん』


「?」
「寝言か」

もう一度横目で確認すると目を疑った

「・・?!、泣いてる・・のか?」

頬を伝って流れる涙
"父さん"って言ったよな
定かではないが、あの寂しそうな姿は父親が関係しているのだろうか

ま、オレが干渉することでもないけど

それより、家どこなの!

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