「ミツバ先生ー!」

満面の笑みで駆け寄って来る金髪の男の子
そう、うずまきナルトだ
持ち前の人懐っこさからか
凄く懐いてくれている

「ミツバ先生!ミツバ先生!オレってば遂にやったってばよ!!」

『本当に?』

「ああ!今からやっから!見てろよー!!」


「分身の術ー!!」

ーボンッボンッ


煙りが舞い上がり二人の人影が見えてきた。が…

今にも倒れそうな分身が一人

『出直してこーい。』


ーバシッ
「いってええええー!」


「くそーっ!見てろよ!次は完璧にすっからなー!!」

頭を抑えながら走り去っていくナルト

このやり取りは何十回目だろう
卒業試験の内容が分身の術かもしれないという噂が広まってからずっとだ

早いものでこの子たちももうすぐ卒業
この子たちとの6年間は私にとってかけがえのないものとなった

何かを投げかけると素直に受け止め全力で投げ返してくれる
私が今までいた世界では想像できないことばかりで毎日が新鮮だった
そして同時に自分にもこんな時期があったのだと大事なことを思い出させてくれた


「あ、ミツバ先生!!」

『サクラ!いの!』

「ナルトのやつまだやってるんですか?」
「何回やってもムダよムダ!」


『……頑張ってるよ、ナルトは』

あの子の努力とまっすぐなところは私が今まで出会った中で1番

認めて欲しいの一心で間違った方向に向かってしまう事もあるが
子どものうちに沢山間違えればいい
ナルトの頑張りに気づいてくれる人がこれから増えるといいな


『それより二人はどうなの?そろそろ決着はついた?』

「それが全っ然!聞いてくださいよミツバ先生!この前私がサスケくんに話しかけようとしたらイノブタったら「それはアンタが悪いんでしょ!このブサイクー!!」なによーっ!!」

しまった、火がついてしまった…

『あ、教室に忘れ物したんだった』ボフンッ

「「あ!ミツバ先生!!」」



それぞれが背負うもの

教卓から見るこの景色も後数ヶ月でお別れだと思うと寂しさが増す
そして気になることが一つ
唯一私が打ち解けられなかった生徒

私がというより彼が周りと溶け込もうとしなかった
が正しいのかもしれない

教室に入るといつもの席に座る
彼の視線はいつもどこか遠くを見ている
体はここにあるのに心は別の場所をさまよっている
周りの女子がいくら騒いでもまるで聞こえていないよう
誰も寄せ付けず、自らも寄り付かない
世の中信じているのはきっと自分だけ

彼がこんな風になってしまったのは四年前、彼の兄が彼一人を残し一族を滅ぼしたあの日から


『サスケ』

横目で私を確認し目を伏せる
「なんか用か」

『べつに』

明らかにイラッとした顔
「オレだって暇じゃないんだ、用がないなら話しかけるな」


『まぁ、ないわけでもないんだけど…』

『………今日、暇?』


突拍子もない事を言い出す副担任に
何言ってんだ、という顔でこちらを見るサスケ

「あんたに教える義理はない」

『ふーん、まぁそう言うと思った。じゃあこう言えば断れないでしょ、先生からの課題。夕方4時に校庭にに来なさい』

「…………チッ、わかった」

まぁ、多少職権乱用だが仕方ない

うちはサスケ
ずっと気になっていた
入学当初は努力家で少しでも兄に近づこうと頑張る男の子
それが今では兄に復讐を望む男の子

抱えているのもが大きすぎて想像もできない
私がどうにかできる事ではないことぐらい分かっている
でもどうにかしてあげたい
私が救ってもらったように
ただの私のエゴかもしれないが

世の中楽しい事も沢山あるって事を知ってほしい

生きる道は沢山あるのだから




日が傾き校庭がオレンジに染まる

『やっと来た、遅すぎ』

「何の用だ」

『授業じゃ満足しきれない天才くんに、私が特別授業をしてあげる』

きっと強くなるためなら何でも拒まない


「……あんたが?」

『先生のこと、完全に馬鹿にしてるでしょ?特別に修行つけてやるからまずは本気でかかってきなさい』

「……」

『……始め』

ーシュン
と音を立てて消えるサスケ
流石うちは、と言いたいところだがまだ下忍にもないっていない子どもに負けるつもりはない
というかもし負けたら退職しよう



ーシュン シュン シュン

背後からクナイ3本が飛んできて左から飛び出てくるサスケ

本気で体術で私に勝てると思ってるのか

飛んできた拳を掴み腕を背中に回し地面に体を押し付ける
クナイをあてがうと ボフン と白い煙に包まれサスケが木に代わる

すると上からサスケが現れ私にクナイをあてがう

ボフン

『ざんねーん』

さらに上から現れゴツンとげんこつを一発

「つッ…!」

頭を抑え膝をつくサスケに
私の勝ち!と喜ぶ大人気ない大人は私です

『どう?思ってたより強いでしょ?』

「フン、偶然だろ」

負けず嫌いめ。
まぁ、これも想定内

『あ、もしかして言い訳?』


ープツン
「おい…明日同じ時間にここに来い」

『仕方ない、相手してやってもいいよ』

「オレがあんたの相手をしてやるんだ」

『ふーん。それは、どーもすいません』

舌打ちをして消えたサスケ

やっぱり中身はまだ子ども
負けず嫌いの素直な男の子なんだろう

明日からが楽しみだ

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