二人の時間



これから忙しくなるんだし、行ってらっしゃい?



全てはミコトさんのこの言葉から始まった

私が二人目を妊娠したことうちは家に伝えるとすごく喜んでくれたお義父さんとお義母さん。そして気を使ってくれたお義母さんは、これから子育てで忙しくなり自分たちの時間が取れなくなるため、二人目が生まれる前に二人で旅行に行ったらどうかと提案してくれたのだ

もちろんイタチは大賛成、私も是非行きたいが何日もハズキを預けるのが申し訳なく思い口ごもっていると、先ほどの一言で背中を押されお言葉に甘えて旅行に行くことにした




「母さん、ハズキを頼む」

『すいません、よろしくお願いします!ハズキ、ちゃんといい子にしてるのよ?』

ハズキと3日も離れたことがないため不安で不安で仕方がない母


「うん!いってらっしゃい!」

とは逆に何も心配していない様子の息子


「二人とも気をつけ行ってらっしゃい。そーね、お土産は温泉まんじゅうでいいわ!」

冗談交じりにクスクスと笑うミコトさん
ミコトさんの優しさには感謝しても仕切れない

「気をつけてな」


後から見送りに来たフガクさんの言葉を背にうちは家を後にした



二人の時間



「意外と賑わってるんだな」

『観光地だしねー』


たくさんの人たちが楽し気に行き交う此処は火の国の有名な温泉街だ


「まず宿に行くか」

そう言って予約していた旅館に向かうと玄関で綺麗な女将さんが迎えてくれた



「ようこそお越しくださいました〜」


「予約していたうちはです」


「うちは様ですね、お待ちしておりましたよ〜あら!もしかしてお二人新婚さん?新婚旅行かしら?」


ウフフ、と嬉しそうに言う女将さん
なんかすごく楽しそうなところ申し訳ないが、新婚じゃないんです。と口を開こうとした時


「はい、先月式を挙げて」

『ええ?!』


「あらあら、それはそれはおめでとうございます〜」

やっぱり!と嬉しそうな女将さん
と、動揺を隠しきれない私


『(え、待って待って)』

「なんだ」

『(なんだ、じゃないでしょ!色々問題ありすぎない?)』


「いいだろう、そのくらいの気持ちで楽しめば」

『まぁ、、そうだけどさ、、、』

なんかうまく丸め込まれた気がする

そうこうしていると旅館の方がお部屋まで案内してくれた


「では何かありましたらそちらの電話でお呼びください、失礼いたします」


旅行の方が部屋から出るのを確認すると、部屋を見渡して

「なかなかいいところだな」

と部屋を見て回るイタチ

『見て見て!窓からの景色もなかなか!』

興奮して窓の外を眺めているとふわっと背中に感じる温もり

『ちょ、ちょっと、イタチ!ハズキが見てるから!』


言って気がつく、そうだ。今ハズキはいないんだった
ハズキが生まれて3年、いつの間にかハズキ中心の生活になっていて
イタチとこんな風に二人っきりで過ごすのは久しぶりだ


「今は二人っきりのはずだが?」

ニヤニヤしながら回された腕に力を込め、肩に顔をうずめるイタチ

普段はこんな風に甘えてきたりしないところを見ると、随分我慢させてたんだなと少し反省

『イタチ?くすぐったいよ』


「…ん」

未だ甘えて顔を上げないイタチ
自分も体重をイタチに預け外を見ながら呟いた


『なんか、新婚旅行以来だね。こーいうの』


するとゆっくり顔を上げるイタチ


「オレは毎日でもこうしてたいがな」

『もしかしてさ、我慢させてた?』

後ろを振り返りイタチを見つめると


「…欲を言うなら、もう少しくっついていたい……」

顔を見せまいとよそを向くイタチ
しかし耳まで真っ赤にさせどんな顔をしてるかはバレバレだ


『こっち向いてよ〜』

未だにこっちを向こうとしないイタチ
普段とのこのギャップが可愛くてたまらない

イタチの腕に収まったまま体の向きを変えるとお互い向き合う形になる
首に腕を回してよそを向いたままのほっぺに軽くキスをした

驚くあなたの顔がとても愛おしい
スルリと腕から抜け出し今日のスケジュールを果たしに行く

『さ!せっかく来たんだし!観光するよ!』

「…ああ」

いつものようにフッと笑うイタチ
二人でいるだけで素敵な旅行になる予感しかしない



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