男はいつまでも少年であれ



「ーーという事だった、すまないシスイ」


やっぱりな、こんな事だろうと思った
二回目の甘味処への呼び出し。

「でも良かったよ。おめでとうイタチ」

妊娠を浮気と間違えるなんてな、イタチらしくもない
ま、正しい判断ができなくなるくらいそれだけミツバに夢中って事か

「オレからしてみたら羨ましい限りだよ」


「そう言えば、お前の方はどうなった」

そろそろだろう。と付け加えるイタチ

「人の事は察しがいいんだな」

イタチの言う通りオレも結婚が決まっている。長期任務前からの付き合いで、帰って来たら結婚する約束をしていた


「そうか、おめでとう」

普段はあまり見せない笑顔と共に口を開くイタチ
長年の付き合いなだけに小恥ずかし気持ちになる


「まさかお互い家庭を持つとはな」

「ああ、あの修練場で組み手をしてる時には考えもしなかった」

幼い頃互いに鍛えあったあの頃を思い出し懐かしむ




「…イタチ、久しぶりにどうだ」
「オレも同じ事を考えたところだ」

お互いの顔を見ると笑がこみ上げてきた
どちらかが声をかけるわけでもなく席を立ち
自然と足はあの修練場へと向かった



男はいつまでも少年であれ



『パパ遅いねー』
「ねー?」


食卓には夕飯が並び、父の帰りを待つ母と子
遅くなる時は必ず一声かけるイタチだが
今日は何も言っていなかった
なので夕飯も食べずに待っていたのだ
しかし時計は進む一方
ハズキのお腹も限界に達していた


「ママ〜おなかへった!」

『パパ待ってようと思ったけど冷めちゃうし、先に食べちゃおっか!』


こうして夫の帰りを諦めて夕食を始めようとした時


「ただいま」

「あ!パパ!」

子ども用の椅子に座っていたハズキは勢いよく飛び降り玄関に走る
後を追うようについていくと

『?!…どうしたの?!』


頭の先からつま先までドロドロに汚れている夫の姿が
まるで夏休みに精一杯遊んできた少年のようだ


「ちょっと昔を思い出してな」


そう口にするイタチの顔はどこか嬉しそうに綻ぶ


『大丈夫?ケガはない?』


「ああ、大丈夫だ。ちょっとシスイと組み手をな」


組み手をしただけでこんなにもなるのだろうか
きっとこの人たちの事だ、ぶっ続けで何十戦もしたのだろう
未だどこか嬉しそうに靴を脱ぎハズキの頭に掌を乗せる
リビングに夕飯が見えたのか

「すまない待っていてくれたんだな」

申し訳なさそうに席に座るイタチ

『温め直すから先にシャワー浴びて来ていいよ?ハズキパパ待てる?』

「うん!」


「そうか、ならば先に風呂に入るか。ハズキすまないな、お腹が減ったら食べてもいいからな?」

再びハズキの頭に掌を乗せると
ううん!と笑顔を返す息子
その笑顔を見届けると風呂場へ向かう




『…ハズキ、パパすっごくご機嫌だね』

「うん!男の子みたいだね!」




『…プッ』

その言葉を息子に言わせる父親って
と思うと笑が止まらなかった



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