30th





「罰ゲームって、これ終わったら……次で最後、だっけ」


私に肩を揉まれながら、ふと思い出したように菊丸君は言った。
その言葉に、ああそうか、そうなんだ……と感慨深くなったのは、私だけではなかったようだった。


「うん……結構長く続いたよね」


ベンチに腰掛け、懐古するみたいに言う不二君。


「俺は何度かしかターゲットになってないけど、楽しかったッスよ。へへっ」


ストレッチしながら、元気に笑うモモシロ君。


「山川のくじ運には正直驚かされたな。いいデータが採れた」


ノート片手に含み笑いしているのは乾君。いいデータって。


「俺の時は、ラケット持たせる?だったよね。はは、あの時は驚かせてゴメンね」


眉を下げつつ河村君は言う。あれはかなりビビりました……。


「俺はもう御免ッスよ……あんな罰ゲーム」


ロードワークの罰ゲームの時に付き合ってくれた海堂君。心配かけてとても申し訳ない……。


「全くだ。また山川が倒れるようなことがあれば容赦はせんぞ」


海堂君とのロードワークの時はとても快く思わなかったらしい、一家に一台手塚君。ホントにもう、ご迷惑ばかりおかけしています……でも、容赦はしてあげてね。


「最後の1回はその、こ、告白とか、そういうのは止めてくれよ、英二?」


そういえば大石君との最初の罰ゲームは、手紙で呼び出しだったっけ。その後の内容がアレだったけど……。


「ダイジョーブだって♪……そんじゃ、」


肩もみはもうおしまいと言わんばかりにガタンと立ち上がった菊丸君は、かばんからトランプを取り出した。

さあ。
部長命令でもあるし、泣いても笑ってもこれで終わり。


「最後のゲームといきますかっ」


私たち9人による、始まりのゲームでもあったポーカー大会が、始まった。


…………
あれ?
誰か忘れてない?



………………




「………………」


「ありがとね山川ちゃん、ホントにありがと」


「うん、最後まで期待を裏切らないでくれてありがとう、山川さん」


「……うん……いいんだ……だってね……こうなることはね……閲覧者のみなさんも分かってたと思うしね……」


「何を言っているんだ山川……」


やっぱりいつも通りの結果にグッタリしてワケの分からない発言をする私に菊丸君と不二君は心からの(謎の)感謝を述べ、手塚君はやや憐れんだ目でそれを見ていた。


「ワンペアすら出ないとは……どんな確率で……ふむふむ……」


「こら乾、こんな時くらい止めてやれ」


真剣な面持ちでノートに計算式を書きなぐる乾君を、ちょっぴり苦笑を漏らしつつたしなめる大石君。


「いやでもホントびびったッスよ〜。まさかここまで運が無えなんてなあ」


「……フシュウゥゥゥゥ……」


私のゲーム運を初めて間近で見た2年生ズは、素直に驚いてくれた。いや、海堂君は分かりにくいけど。


「はは……お疲れ様、山川さん。最後だけど、頑張ってね」


ああ、河村君で癒やされた。ありがとう河村君。


「はい、コレが最後の罰ゲーム」


そう言って私に罰ゲームの書かれた紙切れを渡す菊丸く…………ん、んん?


「え、あれ、くじじゃなくて?」


「まあまあ、いーじゃんいーじゃん最後なんだし!選ばせてよん」


「はあ……まあ、いいけど……」


にこにこと眩しく笑う菊丸君に何も言えずにしぶしぶ紙切れを開くと、そこにはこう書いてあった。


「……“越前リョーマを探して部室に連れて来る”?」


越前って誰……と脳内検索した直後に、脳裏に蘇った校舎裏の光景。木陰、白い帽子、テニスウェア。


「ああ……越前君って、あの」


「そう、青学テニス部の生意気ルーキー。休憩時間に入ってから見てないんだ。探してきてくれる?」


クスッと笑う不二君の後ろにいる皆さんも、何故か薄笑いしている気がしてちょっぴり寒気が走った。


「うん、じゃ、行ってきます」


「行ってらっしゃーい」


テニス部のみんなに見送られて、私は駆けていった。
迷わず、校舎裏まで。


「…………行った?」


「行った行った。じゃ、さっさと準備しちゃいますか!」


残った彼らが、部室で何やら始めていることも知らずに。



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