罰ゲームもいよいよラストスパートかかってきた気がする、本日土曜日。
内容までスパートしなくてもいいのに……と思いつつ、私は震える手で携帯を耳に当てた。
『もしもし、山川か?どうし』
「手塚君ぱんつ何色?」
『…………………………………………………………は……?』
「いや、うん、あの、えと、ぱん……つ……あの、何、色……?」
『………………』
開口一番何て質問してんだよ、とか言わないでください。
罰ゲームなんです。
私の傍らにはニヤニヤ笑いの菊丸君と、早くも肩を震わして口元押さえて笑いをこらえている不二君。
2人とも今回のターゲットである手塚君の反応を、大変楽しみにしていた。
そして、その反応はというと。
『…………山川』
「……はい」
『いいか?嫌なことがあれば、ハッキリ嫌と言ってもいいんだ。そいつらも鬼ではない』
「………………」
神妙な声色で、まるで子供に言い聞かせるように言う手塚君(……ていうか私の傍に誰がいるか分かっているんだね手塚君)。
しかし反応に困る反応をされた私は、一体どうしたら良いのですかね。
「うん……うん、そう、だね」
『……ああ』
「うん……」
『………………』
「………………」
そんな私と手塚君のスローテンポすぎるやりとりを見て痺れを切らしたのであろう不二君は、私の手からヒョイと携帯を取り上げて勝手に会話しだした。
「手塚」
『……不二か?』
「キミもうちょっと面白おかしい反応出来ないの?楽しみにしてたのに」
『…………お前な。俺は先日、妙な罰ゲームは入れないよう言った筈だが』
「妙?どこが?」
なんともツッコミし辛い彼らの会話の中で微かに聞こえる手塚君の声はやや怒気が含まれていて、そんな手塚君に臆せず話せる不二君はハンパないと思う。
まあ……この2人は置いとくとして、任務完了したため安堵の溜め息をついた私のほっぺを菊丸君がツンツンつついてきた。
「手塚ってノリ悪いよね〜」
「え、ええぇ……?いや、至極真っ当な反応だったと思うけど」
「俺ならヒョウ柄!って答えるね」
「……え、ヒョウ柄なの?」
「んーん、違うけど」
「………………」
菊丸君は菊丸君で、とてつもなくスルーしてしまいたいことを言う。
何なんだろう、この人たちホントにもう、何なんだろう。
「じゃあ例えばさ、山川ちゃんは手塚のパンツがどんなのかとか気になんないの?」
「え、うん……」
「ええー?ブーブー」
文字通りブーイングする菊丸君は、不二君の持っている(私の)携帯をグイッと引っ張って自分の耳元に持ってきた。
「手塚はさ、モチロン気になるよね?」
『菊丸か。何がだ』
「山川ちゃんのパンツ!」
……ちょ……菊丸君、なんてこと言うんですか。
携帯から『……ゴッホゴッホ!』と咳き込む音がするじゃないですか。あからさまに動揺しているじゃないですか。あと不二君の「英二ナイス」という声もするじゃないですか。
「ぷっ!なになに〜?手塚ってば想像しちゃったっ?」
『………………』
無言の手塚君。肯定か否定かは判りづらいけれど、この2人はきっと肯定として受け取っているんだろう。
そして、電話の向こうで手塚君がどんな顔をしているのかが凄く気になっているんではないかな。私もちょっぴり気になるし。
しかしまあ、当然というかなんというか。
菊丸君と不二君のワクワク感を十分に煽るくらいの間をあけた後。
手塚君は、こう言うのだった。
『……グラウンド30周!今すぐにだ!』
「えー?」
いや、だからね……真っ当な結果だってばお2人さん。
些か職権乱用している感は否めないけど、怒るのは当然だよ。
……とまあ、そんなこんなで休日出勤する羽目に陥った2人に、私は心の中でうっすら同情しつつ、思った。
これ、私というより手塚君への罰ゲームじゃね?……と
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