26th





『勝ったのか?それは良かったな』


「うん、そうなの。でもみんなね、有り得ないって顔してるんだよ、未だに」


『……明日走らせておく』


「あ、いやそこまでは別に……」


私が見事圧勝したポップン大会の罰ゲームにより空気イスに苦しんでいる大石君をしり目に、 私は手塚君に電話していた(不二君ちでゲームするのが心配だからと結果報告を要求されたので番号を交換している)。


『しかしよく勝てたな』


「うん、得意なゲームだったの。一応ハンデとしてハイパー……ええと難しいやつでプレイしたんだけどね」


『そうか。この際だ、残り数回のゲームも山川が得意なものにすればいい』


「あー……それに関しては、さっき菊丸君たちが“もうしない”って勝手に決定しちゃってですね」


『……やはり走らせる』


「いや……うん、そっか、うん、ほどほどにね」


苦笑を漏らしつつ、手塚君との通話を終了した。

15分間の空気イス地獄から抜け出した大石君は、おしりを押さえていた。


「大丈夫、大石君……?」


「ああ……く、空気イスって意外と、この辺りの筋肉使うんだなあ……はは」


「ごめんね、なんかごめん……」


「い、いや、山川さんのせいじゃないさ……テレビゲーム得意じゃないのに、ビリにはならないだろうとタカをくくっていた俺が悪いんだ」


「あ、はは……」


なるほど、つまり大石君もまた私が勝つなんて思ってなかった訳だね。まあいいけど……。


「んで、この後はどうする?明日やる罰ゲームの分のゲームもやっちゃう?それとももう帰る?」


ゲームソフトを片づけながら菊丸君が言うと、みんなそれぞれ「ボクはまだやりたいんだけどね」「俺はちょっとな……」「俺どっちでもいーッスよ」とまばらな意見を口にした。


「んじゃ、山川ちゃんが決めて」


「え」


「どっちがいーい?どっちにしてもみんな、怒んないからさ」


「う、うーん……ええと……」


い、いきなりそんな決断を迫られてもなあ。
……とか思いつつ、実は何気に私の腹は決まっていた。
言っていいのかどうか迷っているだけで。


「別に気ぃ遣う必要なんてないからねん」


いや……遣うでしょ、特に大石君に遣うでしょ。


「あ、俺は別にどっちでも構わないから……俺のことは気にしないでいいさ」


当の大石君はそんなことを言って「はは……」と人の良さそうな笑みを浮かべているし、なんて善い人なのだろう。いつか悪い人に利用されやしないだろうか。

どうしたものかと考えている内にふと、この間の保健室での件を思い出した。
罰ゲームを続けるか、終わりにするか。

あの時の究極の選択に比べたらそこまで深く考えることでもないよなあ……と思ったところで、私は口を開いた。


「やりたい」


言った途端に言わなきゃ良かったと軽く後悔したのは、みんなが一斉に「えっ!!」と驚いたからだった。
不二君に至っては目を大きく見開いてたし、菊丸君とモモシロ君もユーレイでも見たような顔してたし、いやまあ私がやりたいだなんて言うとは思わなかったんだろうことは分かってはいるんだけど、ホントにもう、ね。


みんなヒドいや。



………………



「あ、でも何やるかは大石君が決めて?」


さっき最下位だったし、とつけ加えるた私のこの意見は採用され、大石君が割と出来る方らしいオセロ対決となった。オセロかあ、懐かしいなあ。


で、ちなみに結果は………………………………………………………………割愛。



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