25th





そろそろゲームも飽きてきた。
と、彼らは言った。


「……えっ」


だったら罰ゲーム終了!?


……なあんていう淡い期待なんてどこへやら、私は今不二君の家にいた。
不二君に菊丸君、大石君、モモシロ君と共に。


「そろそろさあ、トランプとかじゃなくってさあ、ゲームがしたかったんだよね〜。テレビゲーム」


ああ……飽きたってそっちの話ですかそうですよね罰ゲーム終了とかそんなワケないですよね……としょうもないことで人知れず落胆していた私を置き去りに、4人は何をするか話し合っていた。


「何がいい?俺はね俺はね〜、ぷよぷよ!」


「俺格ゲー!」


「ボクは育成かな?短時間で終わるのもあるし。大石は何がいい?」


「ええと、俺ゲームはあまり詳しくないから……というかそういったゲームはどうやって勝ち負けを決めるんだい?」


「ゲームって結構点数がつくやつが多いんだよねん、だからそれで決着つけんの。格ゲーはトーナメント戦とか出来るし」


まあいつものことだけれど勝手にゲームを決める彼らをじっと眺めていたり、たまに室内をキョロキョロしたり、窓辺のサボテンをつついてみたりしていたら、私にも話を振られた。


「山川先輩は何やりたいッスか?色々あるッスけど」


そう言いながらモモシロ君は持参したストリートなんたらとかなんとかファイターとかのゲームソフトを私にずずいと押しつけてきて、私格ゲー苦手なんだけど……という思いを彼にどう伝えるか迷っている最中に、菊丸君も自分のゲームを見せてきた。


「ほらほら、色々あるよん!」


「う、うーん、ん……ん、ん?」


菊丸君のゲームの中にあった音ゲーを見て私は思わず「あ」と声に出した。


「なに?何かやりたいのあった?」


「あ…………んんと……あの、これ」


私が指差したポップンミュージック10を、不二君がヒョイと取り上げて中を見た。


「……へえ、音楽のゲーム?山川さんこういうのやるんだ?」


「うん、まあ……」


ていうか、この場にあるゲームの中でやったことがあるのがそれしかないってだけなんだけど……。


「いいね、面白そう」


「ポップンか〜、久しぶりだにゃ」


「俺ゲーセンのなら得意ッスけど、これは初めてッスね」


「俺もやったことないけど、いいんじゃないか?山川さんがやりやすいやつで」


というみんなの優しさにより、私がやや有利なポップン対決が始まった。
ていうか、そういった優しさは普段から振りまいて欲しかった。

選曲も私がしていいということだったので、初プレイの人も考慮して5ボタン設定で『にんげんっていいな』にした。
一番簡単だし、RボタンもLボタンも使わないし、これなら大丈夫だろう。


「ほいほーい、んじゃ俺からねん」


トップバッターは菊丸君。
流石に持ち主、割と慣れているようで、スコアは89100。


「大丈夫かな……ええと、緑が右?ああ違う、左か……あああ待っ、始まった!」


ぎこちない手付きで2番手、大石君がプレイ。
結果は69000。まあ初心者だしね、良い方なんじゃないかな。


「この曲ってアレだね、日本昔話のエンディング」


そう言って3番目、不二君プレイ。
あれ、このゲーム初めてなんじゃあ……ってくらいグレートやグッドを叩き出し、スコア90120。菊丸君がブーイングしていた。


「うぐっ……おあ!……くっそボタンが分かんねー」


4番目モモシロ君もやはりアナログコントローラーでは初心者らしく、73400。
やはりこのゲーム、それぞれの色に対応したボタン位置を記憶していないと難しいみたいだ。


「山川ちゃんで最後だね〜」


「さて、暫定最下位の大石は60000台みたいだけど……」


「山川先輩は何点とれるんスかねー!」


すんごくにこやかに、思いっきり私が下手くそなプレイをする前提で話している彼らだけれども、私は曲選択画面でセレクトボタンを押しながら、彼らに向けてこう思った。

ごめんだけど……今回は、勝たせてもらうね?
……ってね。



………………



そして待望の瞬間はやってきた。


「………………」


「………………」


「………………」


「………………」


4人分の沈黙の中、私だけが「やった、自己ベストスコア〜」などと呟きながら内心喜びのステップを踏んでいた。


「……あっ、えっとね。ごめん、私コレだけは得意なのね」


ポカンとしたまま微動だにしない彼らに私は、ポップンミュージックのケースを指差しながら言った。
……あのう、驚きすぎじゃないですか皆さん?
そんなに画面を凝視したって、99500の数字は変わらない。


「……えーと……これは……つまり……」


口を開いた菊丸君は、おずおずと大石君を見た。
大石君は何かに気づいたようにハッと表情を変えると、ゆっくりと頭を抱え始めた。


「えっと……それじゃ、ごめんなさい大石君」


私はニヤケ気味の顔を押さえ切れないまま、大石君に言った。


「罰ゲームってことで」


笑顔で大石君に罰ゲームくじの箱を押しつけていたこの時の私は、今までで一番輝いた顔をしていた(らしい。菊丸君談)。



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