21st





「あーあ……」


本日二度目のアレのため、今日も重たい溜め息をつきながら、私は2年のクラスへ足を運んだ。


「ごめんなさいあの、海堂君はいますか……」


その辺にいた子に呼んでもらって登場した彼は、私を見るなり「あ……」と怪訝な顔をした。
この反応をされるのは、予想は出来ても慣れないのであまり気持ちいいものじゃあない。いや、慣れたくもないけれど。


「……ど、どうも」


「ども……ッス」


「………………」


「……罰ゲームッスか」


「罰ゲームです……」


本格的に嫌そうに顔を歪める彼には、なんか……ごめんよ、としか言いようがない。
でもそういえば、彼が単体でターゲットになったのは初めてな気がする。


「ええと、コレなんだけど……」


私がそう言って罰ゲーム内容が書かれた紙を渡すと、目を通した途端に海堂君は「は?」と言って眉間にシワを寄せた。


「……アンタ……運動部でしたっけ」


「ううん……帰宅部」


「…………死ぬッスよ?多分」


「私もそう思う……」


ここまで体力的にキツい罰ゲームは、私の中で史上初だろう。
一応OKは貰えたが、明日の事を思い、私はガックリうなだれた。



………………



さて、朝がやってきた訳だが、私は上下体操服姿で外にいた。
手持ち無沙汰に手をぶらぶらさせながら待つこと数分。
やがてタッタッタと走る音が近づいてきて、海堂君がやってきた。


「おはよう海堂君」


「……おはようございます。本当に……やるんすか」


「う、うん……うん」


「……一応、ゆっくりで行くんで」


「うん……ごめんね、ロードワークの邪魔しちゃって」


「いえ……」


とまあここまででもうお気づきの人もいるかもだけど、罰ゲームはコレだ。

一緒にジョギング。

……ああ、私そろそろ本気で死ぬんじゃなかろうか。


簡単な体操を済ませて、早速走りに行く私と海堂君。
しかしまあ……予想通りというか、数百メートル近く走ったところで私は息切れした。

まず、海堂君が速い。
これでも手加減しているというので驚きなのだが、私からしたら全力疾走だ。流石テニス部のレギュラーだけはある。

んで、私は運動不足過ぎる。
帰宅部だし休日は家で読書かネットサーフィンかゴロゴロだし、友達と遊ぶ場所は図書館とか友達の家とかだし、本当に体育の授業以外では運動していない。

日頃の運動不足を今になって体感しつつ、心配する海堂君に休憩まで付き合って貰いながら、なんとか走り終えたのだった。
……海堂君的ウォーミングアップな距離を。


「はっ、はっ、はあっ、はあっ……」


「………………」


公園のベンチにて。
無言で差し出されたドリンクをゴックンゴックンと流し込む。
深呼吸して、ようやく呼吸も整ってきた。


「………………」


何も発しない隣を見上げると、海堂君はなにやら携帯を片手に難しい顔をしていた。
メール作成画面……かな?


「……?」


「……不二先輩と菊丸先輩に、報告、しろって言われていて……」


私の視線に気がついた彼はそう言うと「フシュウゥゥゥ……」と溜め息?を吐いた。


「どう……報告すりゃいいのか……」


「えー、えーっと…………あー、とりあえず、生きてます……って伝えといてください」


「…………了解ッス」


ぽちぽちと字を打ち込む海堂君。
そんなこんなで、地獄の特訓……もとい、罰ゲームは終了した。


あとで菊丸君たちに聞いたんだけど、海堂君はメールでこう伝えたらしい。


『今、山川先輩と走り終えました。グッタリはしてるけど一応生きてます。あと、これは俺の私見ッスけど、運動系の罰ゲームは控えた方がいいと思います。ついて来れるかすら危うくて、本当に死にそうで、見てられなかったッス』


え、なにコレ、海堂君メチャクチャ優しい。



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