8th





私が罰ゲームと聞いて最初に思い出すのは『パシリ』だった。
そういえば一度も引いたことないなあ、くじに入れてないのかなあ。

……そう思っていた矢先に、


「……“焼きそばパンを買ってくる”?」


本当にあった。



………………



罰ゲームがパシリだなんて珍しい……というのもなんだかおかしな話だけれど、とにかく私はお財布を手に、いつもの名札を胸に、売店へと歩いていた。
ちなみにパン代はワリカンである。


ザワザワ……
昼休みの売店には、黒山のような人だかりがいる……というのが私のイメージだったのだが、そんな思った程ではなかった。

前に並んでいた男子が大量のパンを抱えて去って行くと同時に、私は売店のカウンターへと前進する。


「スミマセン、焼きそばパンを5つ」


マイフレンズ注文の品を注文し、小銭入れをジーっと開いた直後、


「あらっ?……ごめんなさいね、焼きそばパン4つしか残ってないの」


「え」


……売店のおばさんが、そんなことをのたまっているではないか。なんてこった。


「え、え……無いんですか?」


「ホントごめんなさいね、さっきの男の子が沢山買って行っちゃって」


そ、そんな……それじゃあ、罰ゲームは一体どうなるっていうんだ。

罰ゲーム失敗したら更に罰ゲーム、しかも内容がハイレベルで『不二君と寸止めチューを1分間持続』とか『次の体育の授業で菊丸君の着替えを手伝う』とか……そんなだったらどうしよう!
それはやだ!自分で想像しといてなんだけど、すっごくやだ!


早く……買い取らなきゃ!


「あ……あの!その男の子、どっちに行きましたっ?」


自分が焼きそばパンを我慢すればいいんじゃないかとかいう考えなど一切浮かばずそんな極論に達した私は、自分の中に残存する勇気をありったけ絞り出して、10回に渡る聞き込み調査を行いテニス部の部室へと辿り着いたのだった。


…………
……んん?テニス部?



………………



「…………あー」


私が、友達や不二君菊丸君コンビにからかわれ、面白がられているであろうことは、今までの罰ゲームを通して見る限りでは明らかだろう。
……でも、それに併せて、どうやら運命の神様までもが私にイジワルしているようだ。


目撃情報によれば、焼きそばパン大量購入事件(いつ事件に昇格したんだ)の犯人は、ココに入って行ったらしい。
ココは、『男子硬式テニス部』の名が記されている。


「……なんでまた……」


私は頭を抱えた。当然である。

よりにもよって、テニス部。それも軟式や女テニではなく、男子硬式テニス部。
つまりは、クラスメートのモテモテコンビや、眼鏡をかけたこれまたモテモテの生真面目生徒会長や、あのドロドロした創作ジュースを調理していた謎の角眼鏡君ら一味の巣窟ってことだ。

正直…………入りたくない。
コワい、半端なくコワい。でも罰ゲームを追加されたくもない……。

どうしたもんか……と文字通り頭を抱えていた、その時。


「……山川?」


聞き覚えのある、男子生徒の声がした。



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