隠された“言葉”が意味するものは、果たして犯人のことか?
それとも、『彼女』自身のことか……?



「……なーるほどねえ、そう来たか」


ネクタイも無事戻ってきたし、悠々自適に屋上での四限目を過ごすとするか。
そう思いつつ普段から鍵のかかっていないその扉を開くと、扉から約二、三メートル先。嫌でも目につくような場所に、エコバックは置いてあった。


現在、『彼女』の正体を暴こうと幸村や参謀がテニス部の一年を使って部室周辺を見張らせとる。
一度目、二度目も部室のドアノブにエコバックは引っかかっとったから、もし次も来るなら同じ場所を張った方が見つかる確率が高い、っていうのが参謀の意見。『彼女』に関する情報は少なすぎるし、まあ当然と言えば当然な策じゃが。

勿論、レギュラー達の身の回りにも目を光らせとった参謀達じゃが、よもやこんなところに堂々と置いてあるとは思うまい……と、『彼女』が陰で笑っていそうな気がした。
俺もつい、フッと口元が緩んでしまう。


ところで、盗まれた俺の持ち物はボールペンにオモチャのピストル、そしてこのネクタイだけで、三つとも、もう全部返ってきとる。
さあ……一体何が出てくるかのう?

俺は、ちょっとした好奇心に心を弾ませながら、その袋を開いた。


「んー……ほうほう……お、コレは…………ん、んんー?なーんじゃこりゃ?」


真田の下敷き、赤也のフィンガーリングウェイツ(指につけるおもりみたいなヤツな)、丸井の本(前に内容にがっかりしとった“注文の多い料理店”)を確認した後、バックの底に、コツンと硬い何かを見つけた。

俺は、それを摘まんで目線の高さまで持ち上げる。


「…………?」


……本当になんじゃこりゃ?石っころか?
その辺に転がってそうな、グレーの、ちょっと角張った石。

なんでこんなモンが……まさか、盗まれた誰かの持ち物ってことはないと思うが。
洗ってあるんじゃろう、砂がついておらんし少し乾ききってない黒っぽい部分がある。

……で、ふと思い出しエコバックの中を探したんじゃが、どこにも“メッセージのお菓子”が見当たらん。
その代わり……と言っていいんかどうかは判らんが、紙が入っとる。
紙には走り書きで『7月24日』とあった。

いつもはあるのに無いお菓子メッセージ、謎の石ころ、7月24日……。
これらから連想されるモンといえば……。


「……そうか、石言葉か」


石言葉。
花に花言葉があるように、石にも石言葉っちゅうもんがある。ついでに言うと、366日の誕生石も。
今回のメッセージは、きっとソレじゃ。

この石っころは、石言葉を連想させる為に、恐らく『彼女』が急いでどこかその辺の石を拾って洗ってエコバックに忍ばせたもので、メッセージはコレではなく7月24日の誕生石の方なんじゃろう。

……けど、残念。俺は石言葉なんて詳しくないし、7月24日の誕生石がなんなのかも知らん。
どうしよか。


「んんー……仕方ない、調べるか」


そう呟いて、俺は携帯を取り出した。

情報化社会とはよく言ったもので、最近はいろんな調べものが携帯やパソコンで事足りる。
ま、真実ばかりが書かれている訳ではないから、鵜呑みにはせんがのう……。

ウェブページを開き、『誕生石』で検索。
パワーストーンがどうとか謳っとるサイトにて、目的のブツを発見。石言葉もちゃんと載っている。


「……ふーん。そんな怖がらんでもエエのにのう……」


画面に表示される文字を見つめて、俺は今更ながらお菓子が入っとらんのを残念に思った。独り占めしたかったのに。


……さあて。
『彼女』の正体を探る参謀らと、正体を隠したい『彼女』。
どちらが勝つんか、事件の顛末がどうなるんか……実に楽しみぜよ。

そんなことを考えながら携帯をパタンと閉じ、俺は屋上を後にした。



next,Jackal



7月24日
犬の歯型の真珠
…激しい仕返し



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