ハロハロ主人公で鰐の場合
「サッチ!サッチ!」
「あ?なんだよ」
「今日ね〜クロコダイル先生と目があったの!」
「あぁそう」
「興味なしか」
私はこの学校に入学した時からクロコダイルという鰐のような名前の先生に惚れている。つまり、私が彼を好きになってからおよそ2年という歳月が流れたというわけだが、その想いは衰えるどころかますますヒートアップしている。
まぁ私は一途だし〜?あなただけ見つめてる状態ですがなにか?
そんな私をサッチはゴミくずを捨てるときのように扱う。他の女子には木綿豆腐を箸で摘まむよりも繊細に扱う癖にな!フランスパンこの野郎。
肝心のクロコダイル先生に至っては、話しかけようものなら強烈なパンチをいただくこととなる。正直、前にそれで5mくらい吹っ飛ばされた。しかもその瞬間鼻で笑われた。そして私は死んだかと思った。
「お前なぁ〜。脈なしなんだからいい加減諦めろよ」
「黙れ。脈なしかなんてわかんないじゃん!そうやって簡単に諦めるからヘタレとか言われるんだよバカサッチは!」
「なんだと!?誰だこのサッチさまを愚弄した奴は!」
「私とエース」
「みさきてめぇぇ!」
今日もまたバカッチがうるさいな。ってぇぇぇ!?あれは私の彼氏(仮)のクロコダイル先生…!ヒィー!今日も素敵ッ!その色気はとどまるところを知らない。うあああっ今日もそんなフェロモンむんむんでいったい彼は私をどうしたいの…!
「みさき、鼻血鼻血」
「本望!」
「なにが?」
むむっ?
ク、クロコダイル先生が素敵女子と会話をしているではないかッ!素敵なクロコダイル先生に素敵な女の子とかなにその神がかった組み合わせは!私なんか前に鼻をかんだちり紙以下なんて言われたんだぞ…!
「ギリィッ…!」
「青筋やべぇな」
「おいサッチ…。家庭科室からありったけの包丁持ってこい今すぐにだ」
「何に使うんだよそんなもん!」
あああっ!このほとばしる熱いパトスをどうしろと…!そういえば以前マルコ先生にお前は直情型だと言われたっけ。単細胞だから単純で思い立ったらすぐ行動!バカだけどそこがいいところだって言ってくれたっけ。ってことで、
「うるあー!そこの素敵女子ー!」
「みさき!?」
うふふあははと楽しげに会話をしている二人の間に割って入る私は相当なKYだろう。だがしかしこの場合あえてKYなことをしているのだからここはAKYというべきだ。
「ちょっとぉ、アナタ!私の彼氏(仮)に馴れ馴れしくしないでもらえますぅ?」
「え、クロコダイル先生彼女いたんですか?」
「いない」
「え」
「でもみさきさん…」
「こんなちり紙なんか知らん」
「クロコダイル先生ー!?」
エェーッ!た、たしかにさぁ、たしかに私とクロコダイル先生はまだ付き合ってないよ?でもわざわざKYな役をかってまで間に入ったのにこうもバッサリ否定されると悲しくなるんですけど?
しかも先生の顔を見れば随分スッキリした顔をされてる…。
そういえば彼はそういう人だっけね…。なにそれなんか興奮するんだけど…。もういいよ、私は彼限定の雌豚だから。だがしかし…!
「キィーッ!相変わらずひどいじゃないですかちり紙なんて!せめて千代紙にしてください」
「フン、身の程をしれ」
「それに白昼堂々と浮気ですか!あの子可愛かったなちくしょう羨ましい!」
どことなくクロコダイル先生も楽しそうだったな。なんだろう、先生はああいう女の子とか好きなのだろうか。おめめぱっちりまつげバサバサ、髪の毛くるんくるん、肌すべすべ。ムダ毛なし。
……。
「脱毛しに行ってきます」
「そのまま帰ってくるな」
「いやんひどい!でもそこが好き!」
「へぇ」
「こっちも興味なしか」
なんなの?みんな私のことなんか興味ないと?サッチのこの野郎はまだわかるんだけど、今私告白したよね?好きだっていったつもりなんだけど…。
「好きです」
「ふーん」
「……」
ま、まぁ毎日告白してればそうなるよね…!一応クロコダイル先生だって教師だし私は生徒!簡単に返事なんかできないよね!
「もうっ!クロコダイル先生のおちゃめさ〜ん」
バキィッ
「ぐはぁっ」
ちょ、ちょっとスーツをつんつんしただけなのに…!なんとバイオレンスな…!
「も、もっとお願いします…!」
「消えろ豚野郎」
「今日も平和だな」
ハロハロ主人公で鰐先生の場合