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お前の気持ちなんてとっくに知っている


調査兵団に異動する事は今のところ、ナマエのとこの分隊長と団長しか知らなかった。

長い年月を過ごした調査兵団、思い出がありすぎる為にひっそりと去りたかったためだ。それはエルヴィンと分隊長に伝え、二人は快諾してくれている。

伝えていたはずなのに、なぜにか今ナマエはリヴァイと二人きりで、美味しいであろう紅茶が不味く思えるほど心地よくない雰囲気のもとリヴァイの執務室にいる。

ナマエは落ち着かなくて何度も視線を窓に動かしてしまう。
リヴァイがそれを視界の端で見ている事も知らずに。

窓の外は黒に包まれていて、今夜は月の明かりすら見当たらない。
まるで私の心みたいだなとナマエは不味く思える紅茶を口に運ぶ


「なあ、ナマエ」

『なんでしょうか兵長』

「駐屯兵団へ異動するのは本当なのか」

『…誰から聞きました?』

「聞いたと言うよりは、エルヴィンの部屋に行った時に文書がみえた」

『…ああ、なるほど。本当ですよ』


リヴァイがカップをテーブルに置く。一呼吸置いて息をはいた。


「行くな、と俺が言ったらどうする」

『…別にどうもしませんよ。私は駐屯兵団へ異動します』

「そうか」


小さく呟きながらリヴァイは窓の外を見つめた。

ナマエはなんでそんな事を言うのかと動揺を隠せない。
きっと本当なら嬉しい言葉だが、リヴァイは結婚をしていて望む未来は得れない。 なのに、リヴァイは思わせるような言葉をナマエに向けた。


「ナマエ」

『なんですか』

「こっちを向け」

『向いてるじゃないですか』


ナマエは確かにリヴァイに顔を向けている。でも視線はリヴァイと合わないようにしていて、リヴァイはそれが気に入らない。


「こっちを、向け」


惚れた弱味なのか負けてリヴァイの目を見ると、悲しそうな目をしていてナマエは苦しくなって、目を反らしたくなってしまう。


「俺は、お前が好きなんだよ」

『……そう、ですか』


まさかのリヴァイの告白にナマエは固まるしかなかった。口からこぼれた言葉は冷たいもので、ナマエは頭の中が混乱していてどうしたらいいかわからない。

「行くな。俺のそばにいろ」

『え、いや、兵長、だって、結婚してるじゃないですか』

「…ああ、そのことか」

『結婚している人とは、私は無理です』


兵長は立ち上がってナマエに近づき、抱き締めた。

「今は、無理だが、いずれ別れる」

『…ずるいです』

「ずるいのはナマエだろ」

『なんで、なんで、今さらこんなことするんですか』


ナマエはリヴァイを押し退けようとするも、さすが人類最強、びくともしない。


『私は、兵長が、結婚している…っ、からっ』

「俺だって好きで結婚したんじゃねぇよ」

『じゃあっ、なんで…!』

ナマエの頭はもうすべてが理解できなくなっている。
好きだと言われたこと、抱き締められていること、リヴァイが好きで結婚をしたわけではないこと、何よりなぜ自分が泣いているのか。
この涙の意味はナマエには解らない、だが、瞳から溢れだしてくる。


「好きだナマエ。行くな」

抱きしめていた体を少し離し、リヴァイはナマエの顔に触れてしまいそうな距離でナマエを見つめている。
ナマエはぼやける視界にある顔がリヴァイの顔と気付くには時間がかかった。
そして、気付いた時には唇が触れ合っていた。


お前の気持ちなんてとっくに知っている

『っ、じゃあ、なんっで!』

「馬鹿げた結婚を終わらせるまで、気付かないふりをするしかなかった」


リヴァイは無表情で答え、心臓を捧げている身としてまさか兵団の為に結婚しなくちゃいけないだなんて、と心の中で嘲笑った。

資金繰り、ただそれだけの結婚
エルヴィンにしろと言われてするしかなかった、それが足枷になるなどその時は思いもせずに。


「ナマエ俺のそばにいてくれ。これは命令じゃねぇ、頼んでるんだ」


リヴァイのその顔をみた瞬間ナマエは自然と頷いた。










「なんで駐屯兵団行くんだよ」

『兵長が引き止めるの遅くて取り下げれなかったからです』

調査兵団を出ていく朝。
リヴァイは不機嫌そうに腕を組んでいる。
ナマエはそれを気にする素振りも見せずに、部屋の戸締まりの確認をしている。


「行くな」

『残念ながら行きます』

「…たのむ」

『もう、そんなせつなげに言われてもだめですから。それに兵長の婚姻が解消されるころ私はここに戻ってくるつもりですから』


扉を閉めて施錠をし、その鍵はリヴァイに預ける。



『では、行ってきます』

「ああ。」



ナマエが次に調査兵団に戻った時に、いくつの季節を越えているだろうか。

リヴァイは躊躇いなく別れたナマエの腕を掴もうとして出した手を引っ込めた。



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