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お前の気持ちなんてとっくに知っている



雲がまばらに浮かぶ青空、太陽は眩しくて目を細めたくなる。こんなにも太陽は眩しいのに、指先や鼻先がひんやりとして感覚がなくなりそうになる。

ナマエは壁の上で大砲の整備をしている。
本来ならば駐屯兵団の仕事だが、ナマエの技術力は三つの兵団の中でトップクラスで本日は呼び出されたのだ。

大砲の整備は嫌いではない。だけど、ここにはあの人がいない、そう思うだけでナマエのやる気はたちまち下ってしまいそうになるが心臓を捧げた身として、そのような気持ちをグッと胸の奥にしまいこむ。

『さむ…っ』


この大砲はただのお飾りみたいなものだ。実際これでは巨人など倒せないのだから。怯ませる程度ならできるがうなじを削がない限りそれは意味のないこと。

ブレードに用いられている超硬質スチールにて作ろうと考えられている徹甲弾もまだ試作段階で終わっている。そもそもそれもやはりうなじ付近に着弾させなければ意味のないものだが。

任された大砲の整備を終え、駐屯兵に終わらせた事を伝え馬に跨がる。報告書は明後日までに提出との事だが、提出の為にわざわざピクシス司令がのもとへ行かなければ行けないのが面倒でしかたがなかった。だけど、どっちみちピクシス司令の元へ行かなくてはいけないのだから。
馬を走らせながらナマエの頭の中は早送りのように考えを巡らせている。


会いたい。
会いたいのだ、リヴァイに。

だけど、会いたくない。
そして会いたくもなかった。

ナマエはリヴァイに想いを寄せている。自分の中でただリヴァイを想うだけでよかった。この調査兵団で頑張っていく為のひとつの息抜き、目標、それだけでよかったはずなのにいつの間にかリヴァイの心まで欲しがるようになってしまった。
次の壁外調査から帰ってこれたら、討伐数があと三つのびたら、そう理由をつけそれが出来たら想いを伝えようと自分に言い聞かせては、伝える事を辞める。そんな事を繰り返していると、いつの間にか立場は上の方になって行った。


調査兵団本部の入り口に差し掛かり、門兵に帰団したことを伝えるとまだあどけなさが残る新兵が

「ナマエさん、おかえりなさい」

とニッコリ笑ってくれた。

私にもあのような頃があったなと遠い出来事のように思え、馬小屋に愛馬を繋ぎ飼い葉や水を与えて、遠出に付き合ってくれたことを労うように撫でてやると愛馬は嬉しそうに頭を揺らした。



「帰ってきたのか」

『先ほど戻りました。遅くなってしまい申し訳ありません』

「遅いどころか早いぐれぇだ。さすがナマエだな」

『ありがとうございます。兵長では、私はこれで』


リヴァイと目を一度も合わせずに早足で馬小屋から離れる。前なら兵長から褒められたら心臓が爆発するぐらい嬉しくなっていただろう。

ナマエの会いたくて、会いたくない人。
それがリヴァイだ。



分隊長の補佐官まで昇格したナマエは、ついにリヴァイに想いを伝えることにした。
決心が鈍らないうちに、と思い兵長がいる執務室に向かい扉をノックすると団長がいて、慌てて敬礼をした。

『私あとでにしますね』

「いや、大丈夫だ。そこで少し待っていろ」

『申し訳ありません』

「ナマエ悪いね。すぐ済むから」


部屋の隅にて話が終わるのを待つ。
聞いてはいけないと思いつつも耳は二人の会話を追ってしまう。


「だからリヴァイ。たまには休みを取って家に帰ったらどうだ」

「別にあそこが家だと思ってはいない」

「だが、お前の帰りを待つあいつの気持ちにもなってみろ。」

「元々俺が好きにしていいという契約だったろう」

「それはそうだが」

「したくもねぇ結婚までさせられてしまいにゃ子供まで作れだと」


ナマエは固まった

“結婚”

確かにそう聞こえた。
エルヴィンとリヴァイの会話からはそれからもリヴァイが結婚しているという話が聞き取れナマエは目の前が真っ暗になった。と、同時に悲しくなって今すぐにでもここから立ち去りたくなった。

二人の会話が途切れた瞬間にナマエは声を絞り出した。

『兵長、あとで、伺います』

返事を聞かずにそのまま部屋から逃げるように立ち去り自分のベッドに飛び込む。
我慢していた涙が溢れだして枕のカバーがびしゃびしゃになる。

『んっで………っ』


リヴァイが結婚していることは上官の一部にしか知られていなかった。
ナマエは補佐官に成り立てで知らされていなかったのではなく、知らせるタイミングがなかった。
あまり結婚しているという事を知らせたくないリヴァイの手前わざわざ言うことはなくて。

だがエルヴィンとリヴァイはてっきりナマエはもう知っているのかと思い話を進めいた。


涙が止まらない
明日からどうしたらいいのか
ここまで大きくなってしまった兵長への想いはどうしたら消えるのか


ナマエは泣きながらずっとそんな事を考えていた。
そして、明日がこなければいい。リヴァイにどんな顔して会えば良いのかと。

あれからナマエはリヴァイとどう接したらいいのか分からず、ただ避けることしかできなかった。
話しかけられても冷たくあしらうようにするしかできない。





エルヴィンへ帰ってきた事を伝える為に団長室に入るとエルヴィンは疲れた顔をしている。

『…お疲れのようですね団長』

「昨日から寝る暇がなくてね。そんなことよりピクシス司令が喜んでいたよ」

『ああ、もう団長に伝わったんですね』

「うちとしては引き止めたいのだが、な」

『申し訳ないです。ですが残りの一ヶ月引き続きよろしくお願い致します』

「ピクシス司令は随分前からナマエへお熱だったからね」

『私の技術、にですよ』

「まあ、それにしても長年いるナマエが駐屯兵団へ行くのは寂しいものだ」

『そう言って頂けるだけで調査兵団に入れたことを幸せに思えます。』


エルヴィンは寂しげに笑った。ナマエはそんな顔をするエルヴィンを見ている事しかできなかった。

駐屯兵団へ所属を変える。
悩みに悩んで出した答えだ。ピクシス司令から随分前から話は頂いていたが、調査兵団が好きだから断っていた。

だけど、こうやって毎日リヴァイを避けるようにしていてもリヴァイへの気持ちを無くせる訳でもなくて、だったらいっそ思いきって駐屯兵団へ行ってしまおう。認められている技術力も生かせる、と。


残り一ヶ月。
珍しくその間に壁外調査の予定はない。



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