Valentine Day | ナノ
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調査兵団内が今日は賑やかだ。
今日は何かあったかと思い出そうと頑張ったけれど特別な予定は何もなった。訓練もいつも通りだし、なぜそんなに賑わっているのか。
結局わからないままエルヴィン団長がいる団長室の扉を手にかける。

『おはようございます』

「ああナマエおはよう」

団長がにこやかに返事をしてくれる。
午前中に終わらしておきたい執務内容を確認し、早速取りかかろうと団長室から出ようとすると団長に引き留められる。


「ナマエ。楽しみにしてるよ、今晩」

『…今晩?』

今晩団長と何か約束をしていただろうか。そんな予定があったかと記憶を辿るがそんな予定など思い当たらなくて何を言っているのかと団長を見ていると団長が眉をひそめる。


「…もしかしてだがナマエ。今日が何の日か知らないわけじゃないだろうね?」

『……今日何の日ですか?』


だっていくら考えても今日団長と約束をした予定思い当たらない。


「…今日はバレンタインだから……折角可愛い恋人から貰えると思っていたがどうやら…」

ハア、とエルヴィン団長はわざとらしくため息をつく。

『…ああ、バレンタインだからか』

バレンタインだから兵団内が賑わっているのか。納得した。


「ナマエ、」

『チョコレート用意してないですよ?』

そもそもバレンタインとはめんどくさい日だ。なぜわざわざチョコレートを送らなくてはいけない?愛の形?日頃の感謝?なぜそれをチョコレートととしてあげなくてはいけないのか。チョコレートじゃなくたっていいじゃない。触れ合い、それを口にすれば良いことじゃないのか。


『そんなに欲しいんですか?だって団長は私があげなくてもたくさんもらうでしょ?団長なんだし』

「恋人から貰えなかったら意味がないんだよ、ナマエ」

『今さら買いにも行けないので我慢してください』

団長はあからさまに不機嫌そうな顔をしていて、どっちが年上なのかと言いたくなる。

『では、団長失礼します。』


団長からの返事はなかった。
午前中に執務をこなし、午後は立体機動の訓練をした。
兵士たちの浮わついた雰囲気のせいで私は少しいらっとする。浮わついてもいいから、訓練にまでそれを持こむな…!

一通りの訓練がおわる。簡単なミスが目立ちこれが壁外だったらどうするんだ、という言葉が喉まででかける。


『…あなたたちこれで巨人を倒せると思ってるの?思ってるのなら今日の訓練終わりでいいけど。浮わつくのは構わないけれどそれを訓練までに持ち込まないで』

兵士たちの顔が暗くなるのがわかる。だけど、遊びじゃないんだよ、これは。

「も、申し訳ありませんでした…!」

一人が謝りだすと、全員が謝りだした。


『…ったく今日だけ特別に許すけど次からはしっかりしてね。これで訓練で終わり。』

ああ、きっと今私嫌な上官だろうなあ。だけど、あなたたちの命を守るのも私の仕事なんだよ。




訓練後軽くシャワーを浴び食堂へと向かう。
食事をしながら不機嫌そうな恋人の顔を思い出す。少し急いで食事を胃に放り込んで、しょうがないなあと自室に戻る。
そして、棚の中に閉まっておいた少し高いとっておきのココアをとりだす。
簡単に手に入るものじゃないんだけど、そう言ってる場合じゃないもの。


食堂に戻り、マグカップの中にココアを入れてお湯注ぐ。ぐるぐるとかき混ぜる。そして、私は団長室へとむかう。


ノックもしないで扉を開けると案の定まだ執務をしているエルヴィン団長がいた。


『はい。団長これ』

「…それは」

『ココア。買いに行けないからこれで我慢してください』

「……ああ。」

団長はペンを机におき、ソファーへと移動する。
私の隣に座りココアを受けとる。そして、それを口にする。

「甘いな、」

『団長甘いのあまり好きじゃないのにそこまでしてチョコレート欲しいんです?』

「それは勿論。だって君の気持ちが欲しいじゃないか」

『…いつだって、団長にあげてるじゃないですか』

「団長じゃないだろ、もう。」

『エルヴィンさんにいつも私の気持ちはあげてますよ』

エルヴィンさんは目を細めココアを口にする
機嫌は治ったようで安心する。

気持ちなんていつもエルヴィンさんにあげている。
本当は団長じゃなくて、いつだってエルヴィンさんって呼びたいよ。だけど、それはそれでこれはこれなのだ。
エルヴィンさんの恋人だからって、そんな風に思われたくないから。



『ちなみにどれくらい貰ったんですチョコレート』

「そこにある分がそうだ」

エルヴィンさんが目線を送った。そこと言うのは棚の事で、そこには色とりどりでたくさんのチョコレートがある。…ほら、やっぱりエルヴィンさんはたくさんもらってる。


『…わ、高級品のやつまであるじゃないですか』

「ナマエ食べるか?」

『いいの?』

「だって俺はこれだけあればいいかなら」

そう言いながらエルヴィンさんはまたココアを口に運んだ。






どうせ私があげなくても貰うでしょ?


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