私だけの臆病者 (levi) | ナノ
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しょうがないからなってやるよ



黒い信煙弾が打ち上がったのを見た瞬間ドクリッと嫌な予感がした。

あそこはナマエの班がいる方向だ、と。
自分の班の指揮をエルドに任せて自分の持ち場から離れ、その方向に向かった。

何も起きなければいい、そう思いながらその方向へ向かうと嫌な予感は的中していて、身体中から怒りがこみ上げた。


『つっ、あっ…あ゛あ゛!!』

その悲痛な声は紛れもなくナマエの声で、全身がドクドクと波打つのがわかった。自分の意識よりも先に身体は動いていて、その巨人のうなじを削いでいた。
シュウシュウと巨人から煙があがる。握りしめられているナマエを解放しにいくと、ナマエは意識朦朧としていてほとんど閉じた瞳から涙を流していた。

「目をあけろナマエ!」

『リヴァ…イ…?』

「ナマエ!」

『リヴァイ…ごめんね、言い…過ぎた…』

「もう喋るな…!」

『やっぱりリヴァイ、と結婚、したい…し、てくれる…?』

「ああ結婚だろうがなんでもしてやる。お前の苗字ももらってやる。だから喋るな!」


うっすらと空いた瞼の隙間から見える瞳は焦点があっていない。
こんな時までナマエは俺に求婚してくるんだから本当に馬鹿だと思った。
意識がなくなったナマエの手を自分の頬に当て、泣きたくなった。

もっとはやく信煙弾に気付いていれば、
もっとはやく謝っていれば、
あのとき、ナマエの気持ちを受け入れていれば、
こんな気持ちにはならなかったのかもしれない。

悔いない選択をしろだなんて、どの口が言っているんだと自分自身を殴りたくなった。


ナマエの身体を壊れ物かのように優しく抱えた。















「リヴァイ…いい加減にしたらどうだ」

『さあ…な…』


あの日どうやって帰ったのかあまり覚えていない。
ナマエの居ない調査兵団は寂しさが充満していた。それは俺だけが感じているだけなのかもしれないが。


「人類最強だからってさすがに飯ぐらい食わないと死ぬぞ」

「いらねえ」


エルヴィンの野郎はうるさく毎日言ってくる。食欲など湧かなかった。
腫れ物のように扱われて嫌気がさした。そんな自分に更に嫌気がする。








「リヴァイ、やっといたのか!」

「一人にさせろ」

「まったく!そんなんじゃナマエが悲しむよ!」

「うるせえ」


夜中コッソリと抜け出してナマエに星を眺めに連れてこられた森でボーッと辺りを眺めているとハンジがやってきた。鳥の鳴き声しかしなくて落ち着いていたのに、静寂をぶち壊されて台無しだ。


「ったく、やっとナマエの意識が戻ったって伝えにきたのにリヴァイは!もう!」


意識が…戻った…?


「はやく、病院行ったげて!」


立体機動装置つけていたおかげでいち早く調査兵団に戻れた。もっとも兵団敷地内にいればもっとはやくナマエのいる病院に行けたんだがな。
モブリットによって俺の馬が用意されていて、それに跨がり、すぐさま病院へ向かった。









ハンジに教えられた病室に行くとそこには身体に無数の包帯を巻き、管が繋がれたナマエがいた。
俺に気づいた名前が少し顔をむけて口を開いた。


『リヴァイの臆病者』

「……」

『一回もお見舞いこなかったんだって?エルヴィンから聞いたよ』

「…悪い」

『リヴァイって本当に臆病だよね』

「そうだな」

『私が死ぬと思ったの?死ぬわけないでしょ。リヴァイを置いて死ぬわけないでしょ。…いや、正直自分でも死んだって思ったんだけどさ』

ナマエはいつも通りに喋るな。まるで死にかけたのが嘘のように。
身体を見れば嘘でないのがよくわかるが。


「なんだよそれ」

『ねえ、リヴァイ。』

「なんだよ」

『私は、ここにいる。リヴァイ、すき、だよ』


真剣な瞳でみつけてくる。
かろうじて包帯のない頬を触ると少しナマエが痛そうに顔をしかめた。


「痛かったか…悪い…」

『大丈夫。』

「俺の気持ちなんて知ってんだろ」

『よーく知ってるよ。でもリヴァイの口から聞きたいじゃん』

「言わねぇ」

『夢の中のリヴァイは苗字でもなんでももらってやるっていってくれたのになあ』

「…それを夢だと思うのか」

『え?』

「なんでもない」

『え、え、リヴァイ?』

「はやく、身体治せ。お前の居ない調査兵団はクソみてえにつまらない」


ナマエはニッコリと笑った。







それから2ヶ月後、ナマエは退院した。

寝っぱなしだったから筋肉がなくなったーって喚いていた。また訓練すればいいだろうと咎めた。

訓練の前に調査兵団内の生活に身体を馴染ませなくてはいけない。


『なんで私の私室なくなってるの!』

「俺と一緒じゃ不満か」

『不満じゃないけど、私の居場所なくなってるみたいで嫌なんだもん』

「お前の場所は俺がいるところだからいいだろ」

『リヴァイ…頭打った?』

「打ったのかもな」

『病院いく?』

「冗談ぐらいわかれ馬鹿」

『こっちも冗談だし!』

「…なあ、ナマエ。」

『なーに?』

「俺はリヴァイだ。ただのリヴァイだ。」

『知ってるよ?どうしたの?』

「お前を嫁にしてやりたいが生憎苗字がないんだ。しょうがないからナマエの苗字貰ってやるよ」


ナマエは勢いよく抱きついてきた。グスグスっと聞こえる。絶対鼻水つくじゃねえか汚い。


しょうがないから、リヴァイ・ミョージになってやるよ。

end.


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