赤い泡沫とともに
気分が重い。結局あの日から一度もリヴァイと言葉を交わすことはなかった。視線すら交わしていない。
この重たい気分を忘れさらなくてはいけない。何故ならばこれからを壁外調査を開始するから。
直前の雰囲気は異様だ。当たり前だこれから壁外にでるのだから。生きて帰ってこれるのかすら分からない、遺体の一部が持って帰って貰えればいいほうだろう。
エルヴィンの声が辺りに響く、さあ、前進だ。
今回の壁外調査は補給物資を運ぶことが目的であり短距離の遠征である。
今日中に戻れるだろう。
そう、私は戻るのだ。
「長距離索敵陣形!展開!」
またエルヴィンの声が響いた。
荷馬車の護衛班の私の班は比較的安全な場所にいる。安全だなんて言えないけれど。
赤の信煙弾が空高く立ち上がる。エルヴィンが確認次第今度は緑の信煙弾が立ち上がり進路が変わる。そうして巨人と遭遇しないように前進する。いかに巨人と戦わないかが重要なのだから。
目の前に集中をする。
今はリヴァイのことを考えている場合ではないんだ。わかっている、わかっているのにリヴァイの顔が浮かんでくる。これではだめだ。
おかれている現状を理解し、自分の班員の為にもしっかりしなくてはいけない。
その時だった。
「ナマエさん!巨人です!」
取りこぼされたでだろう巨人が現れた。いち早く対応しなくてはいけない。いけないのにすでに班員一人が赤い泡沫とともにバラバラになるのが見えた。
奇行種、の三文字が頭を過る。
『黒の信煙弾を打って!!私はこの奇行種の足を狙う!!』
ここには好都合にも高い木々たちがはえている。ここで食い止めなくては補給物資までもが危ない
アンカーを飛ばし、馬から離れ空を飛ぶ、そして奇行種の足元へブレードで襲いかかる。
体勢を崩した奇行種は、班員のトーゴによってうなじを削がれた。
安心した。安心したその瞬間ドシンドシンドシンと地響きがする、嘘でしょと音がする方向に目を向けると先ほどよりも大きい巨人がいた。しかもかなりスピードがはやい。
悲鳴が聞こえる。先ほどの奇行種のうなじを削いだトーゴの声だと瞬時にわかった。体勢を建て直せてなかったのだ。
思わず、その巨人に向かってアンカーを飛ばす。
冷静な判断を失っていたんだと思う、その巨人に近づいた瞬間に黒い大きな物で視界が遮られた。そして身体がギリギリと締め付けられる感覚が私を襲う。
『つっ、あっ…あ゛あ゛!!』
苦しい痛い息が出来ない
こんな時にも頭に過るのはリヴァイで、色んな思い出が脳内に流れ出す。これが走馬灯というやつかと他人事のように思えた
嫌だ、死にたくない。
リヴァイに謝ってない。
でも、もう私はここで終わるのだろう。
リヴァイ、ごめんなさい。ありがとう、大好きだったよ。
「――――クソが!!!」
リヴァイの声が聞こえた気がする。
幻聴までするなんて本当に私は終わりなのかもしれない。
「目をあけろナマエ!」
『リヴァ…イ…?』
「ナマエ!」
『リヴァイ…ごめんね、言い…過ぎた……』
「もう喋るな…!」
『やっぱリヴァイ、と結婚、したい…し、てくれる…?』
「ああ結婚だろうがなんでもしてやる。お前の苗字もらってやる。だから喋るな!」
神様、ありがとう。
最後の最後までリヴァイの幻覚見れるだなんて。
もう、思い残すことは、ない。
リヴァイ、あいしてる。
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