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重たい心と共に



心臓がぞわぞわする。
団長の命により調査兵団の兵士が全員集められて、いままさに団長が壇上にあがる。

「今日集まって貰ったのは大事な話がある。
知っている人もいるだろう。そこにいるナマエ・ミョウジはあのベルク伯爵のご令嬢である。それを縁にこの度ベルク家と手を結ぶことになった。ナマエ自身の安全の確保という条件で今後調査兵団への一番の出資をしてくれると。
ナマエ・ミョウジはこの出資条件により今後壁外調査へ出ることはない。調査兵団に属して壁外へでないとは笑い話にも聞こえるだろう。だが、これは彼女にしかできない役割りであるから笑い話などではない。この事について文句のあるものがいるならばそれは全て私に伝えたまえ。だが、それはどういうことか分かるだろうな?」

エルヴィン団長が巻くしたてるように話し、兵士が困惑しているのが伝わってくる。
……何人かが眉をしかめながら私を見ている。


「ナマエは今後私の補佐かそこにいるリヴァイ兵士長の補佐にするつもりだ。
話は以上だ。」


壇上より団長が去ると辺りがざわめきだす。そして、私を見てくる。

やめて、見ないで。


「ナマエ……お前やっぱベルク家の娘じゃん」

「なに、お前生き延びたいからって父親にでも頼みこんだんかよ」

「黙ってないで何か言ってよナマエ」

やめて、お願いだから一斉に言わないで見ないで。
これだからベルクという名を名乗りたくなかった…、なのに、

「おい、お前ら。文句があるならエルヴィンに言えと言われただろ?」

「リヴァイ兵長……!」

「おら、ナマエ行くぞ。」

『あ、兵長……っ、』


兵長が私の腕を掴み、その場から連れ出す。兵長の掴まれた所が痛い。

しばらくすると兵長は腕を離してくれた。


「ナマエわりぃ。」

『え、』

「腕だ。痛かっただろ」

『……あ、大丈夫です。』

「……まあ、いい。今後もこのような事があるだろう。言い返すぐらいしたらどうだ?まあ、揉め事になったらめんどくせぇが。俺かエルヴィンの補佐にするとアイツは言ったが……お前はどっちがいい。」

『え、どちらかと言われましても…』

「エルヴィンは常にお前の事を守ってはやれねぇ。それは俺もだ。だがエルヴィンよりは俺の方がまだお前を守ってやることはできる。それにエルヴィンの補佐になったら寝る暇なく忙しくなるぞ」

『……兵長が嫌でなければ兵長の補佐で……お願いします。』

「エルヴィンには俺から伝えておく。お前は俺の執務室に先に行ってろ」

『了解です。』

「着いたらちゃんとカギしめるんだぞ」

チャリと音を立てて兵長は執務室のカギを渡しそのまま団長のもとへと去っていった。

私は重たい心と共に兵長の執務室へと向かう。
カギを差しこみ回すと、数えれる程度しか入ったことのない兵長の執務室に戸惑う。


『ソファー座っていいのかな……』

綺麗に整頓された兵長の執務室は緊張する。私の部屋なんかよりも綺麗で落ち着かない。


しばらくするとドアがノックされる。一瞬身構えるが、それが兵長のノックだと気付く。カギを開けると兵長の姿が。

『あの、兵長……』

「ちゃんとカギかけてたんだな。」

『はい。』

「まあ、座れ」

兵長がドサッとソファーに座る。
私も兵長と向かい合わせ側のソファーに座る。

「ナマエ、お前は俺の補佐になることが決まった。それに伴い班も俺の班に移動だ。兵士長補佐、それがお前の役職になる。あと部屋も上官用の部屋に移動だ。」

『……え、』

「分かったか?」

『わ、分かりました……』

「当分は俺の側にいろ。落ち着くまでは共に行動する。これはエルヴィンからの命令だ。」

『兵長…なんか、申し訳ないです……』

「別にお前が謝る事じゃねぇよ。文句言うならてめぇの親父に言え。」

『それも、そうですよね』

そうだ。事の発端は全て父のせいなのだ。

「さ、今からてめぇの部屋の引っ越しするぞ」

『……兵長も、ですか?』

「言っただろ。当分は共に行動すると」

『そうでしたね。』


兵長と共に私の部屋へと向かう。
途中何か言いたそうな顔をした先輩兵士が私と兵長を見つめているのに気付く。




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