ブーゲンビリアの花びら | ナノ
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人生をかえる一週間


『と言うわけなのですが、一週間ほどお休みを頂いてよろしいでしょうかエルヴィン団長』

「ああ、構わないよ」

意外だった。こんなにもすんなり許可を得れるは思わなかった。
…もしかして、エルヴィン団長宛の手紙にはそれがすでに記されていたのだろうか。父の事だから何かの取引があるはず。そう言えば呼び出された日エルヴィン団長がこれから先調査兵団にとっての、と言っていた。ならばこのやりとりの影には取引があるのが間違いない。

「そうだな、明後日から一週間休むといい。」






愛馬を走らせる。この前は馬車で行ったけれど、愛馬で行った方がはやい。

時々休憩を挟みながら屋敷へと進んでいく。
風になびく自由の翼が私を調査兵団の兵士であること再認識させてくれる。

屋敷に着くと愛馬は疲れているかと思いきや久々に思いきり走れたせいか嬉しそうに私に顔をよせる。

『さすが。いいこだね』

頭を撫でてやるとさらに嬉しそうに顔をよせてくる。可愛い可愛い私の愛馬。愛情を注げば注ぐほどこのことの距離は縮まった。そしてその注いだ分だけの信頼がうまれ、このこは私の大切なパートナーだ。


「ナマエお嬢様、おかえりなさいませ」

今日帰るなど伝えていないはずなのにアルフレッドが出迎えてくれる。…やっぱり私の知らない所で父とエルヴィン団長はやり取りをしているに違いない。

「馬は厩舎へお連れいたしますのでナマエお嬢様は旦那様のもとへ。旦那様は書斎におります」

『ありがとうアルフレッド。』

父がいるであろう書斎へと向かう。
ノックをして扉を開けると父が机に向かっていた。


『ただいま帰りました、お父様』

「おかえりナマエ。馬車で帰ってくれば良かっただろうに。疲れただろう?湯浴みの準備を済ませてあるから、済ませておいで」

『ありがとうございますお父様。ではのちほど』


自室へと向かうと、自室の前で使用人が待ち構えていた…もしかして…。

「ナマエお嬢様。湯浴みのお手伝いをさせていただきます。」

あー…やっぱり。

『気持ちは嬉しいけど、もう一人で入ることに慣れてるから大丈夫だよ。戻っていいよ』

「……しかし、それでは私がアルフレッドに怒られてしまいます。」

『じゃあ、私の部屋で紅茶でも飲んでて。用があっあたら呼ぶから。わかった?』

渋々と彼女はわかりました。と呟いた。


自室に隣接されるように設置された浴場。
湯船にはバラの花びらが散らされ浮かんでいる。きっとアルフレッドの仕業だ。
数年前までこの生活をしていたというのに、酷く贅沢に感じる。兵士になってからこんなこと一度もなかったし、調査兵団はいつだって資金不足である。


『……でも、気持ちいいな』

いつぶりか分からない程の広々とした浴槽に、バラの香り。気持ちは安らいで行く気がした。








大きなテーブルで食卓を囲む。
久々に家族全員揃ったと母は喜んでいる。
父と母。兄、姉、そして弟。これが私の家族だ。

「お前巨人見たことあるんだよな?」

兄が興味深かそうに聞いてくる。

『もちろんあるよ。一応それなりに討伐数もあるよ』

「…すごいな。」

『兵士だからね。』

「壁外ってどうなってるの?」

『うーん…壁内とさほど変わらないかな。家がないだけで。あと巨人がいる。それだけ』

「ナマエ…よく帰ってきたな。お帰り」

『お兄様、ありがとう』

すごいな、と感心している兄に少しこそばゆくなる。
よかった。調査兵団の兵士だからということでよく思わない者もいるなかで兄が受け入れてくれて。


「でもナマエ、そんなんじゃお嫁にいけないよ?」

『行く気はないから大丈夫だよお姉様。』

「えー、女の幸せじゃない。ちなみに私はそろそろお嫁に行くからこうやってナマエと食事出来て嬉しいわ。」

『幸せは人それぞれじゃない?本当?お姉様おめでとう。』

私と兄と姉のやり取りを母は嬉しそうに見ている。
…弟が一言も口を聞いてくれないけれど。






食後自室に帰る。部屋でボーッと月を眺めていると普段の調査兵団内の生活とここは同じ世界なのかと思ってしまうほど別世界だ。

いつぶりか分からない私のベッド。ふかふかして気持ちよくて調査兵団の兵舎のベッドなんか比べ物にならない。
……だけど、なかなか寝つけないのはもうここが私の居場所だからじゃないからだろう。

そして一週間があっという間に経つ。
ただ父と母とゆっくりと過ごすだけの一週間。正直退屈だった。一週間も立体機動の訓練をしてないからきっと鈍っているだろうし、自主練習さえもできていない。筋力だって落ちているに違いない。

そろそろ帰ろうかと用意をしていると、アルフレッドに呼ばれ客間に向かうとそこにエルヴィン団長とリヴァイ兵長の姿がある。

『おはようございます……!』

「ナマエ腕をおろしたまえ。一週間ゆっくりできたかい?」

『すみません。おかげでゆっくりしすぎて立体機動の訓練が怖いほどです……』

「ははっ。帰ったらリヴァイにしごいてもらうといいよ」

「……はっ、やなこった」

「そう言わず訓練見てやればいいだろリヴァイ」

『兵長に訓練見てもらうだなんておそれおおいです……!』

「ナマエ。私たちは君のお父さんと話があるから……そうだね、二十分後にまたここにおいで。その間に準備をしておくといい。」

『了解です。』









「エルヴィン殿。わしは気がかわったよ。手紙に記した約束はなしとすることにした。」

「それはどういうことでしょうか。」

「ナマエを壁外調査の際一番安全な場所への配置……だが、やはり壁外へ出ることその物が許せなくなってしまった。ナマエと少しでも長くいたいわしより先に死んで欲しくないそう思ってしまったのだ、この一週間で。」

「……では、約束はどうなさるのですか」

「ああ、なしにするのはナマエの壁外にて配置の話で、援助はする。娘がいるのだから勿論君たち調査兵団の支援者になるよ。ただ、ナマエを壁外に出すことをしないという約束でな」

エルヴィンとナマエの父親が沈黙のまま見つめ合う。

「わかりました。その約束承諾致します。」

「話のわかるやつで助かるよエルヴィン殿」


エルヴィンが胡散臭げに笑う。
……ナマエはこのことを知らない。知ったらどう思うのか。

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