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溢した想いは空に消える


緊張のあまり寝れないかと思っただけど、いつもよりも寝付くのに時間はかかったけどそれなりに寝れた。
だって今日はリヴァイさんとお食事に行く。その行為はこれで三度目なんだけど、だって今日はクリスマスだから余計にそわそわする。
クリスマスに誘ってくれるなんて、期待しちゃうよ、リヴァイさん…

身支度を整えリヴァイさんをまつ。ドキドキが最高潮。


―――カランカランッ

『リヴァイさん…っ!こんばんは!』

「ああ、待たせたな」

『いえ、大丈夫ですよ』

「なら、行くか」

『はい!』

扉を閉める。二階の窓から母が笑顔で手を振っている。…なんだかすごく恥ずかしい。


『今日はどこへ行くんですか?』

「今日は馴染みの店に行く」

『ふふっ、楽しみです。…リヴァイさん、今日、クリスマスですけどクリスマスに私なんかとお食行ってよかったんですか?」

リヴァイさんは私の顔を見てくる。そして一瞬眉間にシワを寄せる。

「…そういや、今日はクリスマスだったな」

その一言にどん底に突き落とされた気がした。
期待なんか、やっぱりするもんじゃない

リヴァイさんの顔を見れなくて、足元を見ながら歩いているリヴァイさんが私の腕をひいた。

「ここだ。」

『ここ…ですか?』

「ああ。店に見えないだろ」

リヴァイさんの言う通り食事をするように店には見えなかった。普通のお家、それが感想。

リヴァイさんは玄関を開け入っていく。私も続くと外観からは想像できなかったけど、中はとても立派で驚いた。
驚いていると、お店の人が近付いてきてリヴァイさんと私を席に案内してくれた。



蝋燭の光が揺らめく。
運ばれたお料理はとても美味しくて、さっき受けたどん底の気分が晴れていく気した。
真っ白なクリームの赤い果実が載ったケーキを頬張っているとリヴァイさんが、あの優しい瞳でわたしを見つめている。ドキリと心臓が動く。

「俺の分も食うか?」

『え、でもそしたらリヴァイさんの分が…』

「甘すぎるのは苦手なんだ。ナマエが作るパウンドケーキは好きだが、こういうクリームのケーキは…」

『…じゃあ、いただいていいですか?』

「ああ。」

リヴァイさんがうなずく。
相変わらず優しい瞳でわたしを見つめてくる。
心臓がもたなくなりそうで、美味しいケーキの味が分からなくなってきそう。

リヴァイさん、そんな風に言われたらますますリヴァイさんが好きになってしまうよ。










アルコールを飲みすぎた。意識がふわふわする。
だけど、とても気持ちがいい。

リヴァイさんと来た道を帰る。

「ナマエ、転ぶぞ」

『ふふっ、転びませーん!』

「転んでも助けねぇぞ」

大丈夫でーす、と言おうとした瞬間視界が揺れた。
あれ?と思っていたら視界にリヴァイさんの顔がはいる。

「言ってるそばから、ったく」

上から覗きこむようにリヴァイさんに抱き止められていると気づくのに時間がかかった。
こんなにもリヴァイさんと触れているのは初めてで、悪態をつきながらも覗きこんでくるリヴァイさんの瞳が優しいせいなのかそれともアルコールのせいなのか心臓がドキドキドキドキうるさい。

「大丈夫か?」

『リヴァ、イさん……すきです、』


自分の口から漏れた言葉に驚く。
泣きたくなった、何言ってるの私。リヴァイさんに言ったって迷惑でしかないはずなのに。

リヴァイさんは私をちゃんと立たしてくれて、何も言わない。触れていた部分が離れて寒く感じる。

『リヴァイさん…やっぱ、いまの聞かなかったことにして…くださいっ、』

「…俺も、だと言ったらナマエはどうする?」

『…え、今なんて』

“俺も”そうリヴァイさんは言った。
聞き間違いじゃないよね?え?うそ、だよね?

「ナマエ顔真っ赤だぞ」

こみあげてくる羞恥心。リヴァイさんに笑われるほど私の顔は真っ赤になっているようでさらに恥ずかしい。

「ほら、手」

『手…?』

「また転びそうになったら困る」

おずおずと手を、リヴァイさんの手に重ねるとリヴァイさんはギュッと握りしめてくれて、アルコールのせいなのか思考回路が追い付かない。


リヴァイさんと無言で歩き続ける。だけど握られた手からリヴァイさんの体温が伝わってくる。
自宅が見え初めてそろそろお別れしなくちゃいけないという現実がやってきた。
お店の入り口の前に着くと、リヴァイさんと繋がれてい手が離される。

「…ナマエ、さっき言ったのは嘘じゃねぇ」

『リヴァイさん』

「楽しかった。また会いにくる。……それと、いい誕生日になった。」

『…誕生日?え?え?リヴァイさん?え、今日誕生日なんです!』

リヴァイさんは答えなかった。なんでそう言うこと言ってくれないのリヴァイさん。そしたらプレゼントなりなんなり用意したのに!

『リヴァイさん、ちょっと待っててください』

私はお店の中に入り、カウンター内に置いておいた包みを持ってくる。クリスマスだからリヴァイさんの為に作っておいたパウンドケーキだ。

『リヴァイさん、これ。クリスマスだから作っておいたパウンドケーキです。今日のは乾燥させた果実入りです…誕生日なのに知っていたらもっと違うもの用意したんですけど…!』

「これで、充分だ。そろそろ帰らねぇといけねぇから、またな」

包みを受け取ったリヴァイさんは踵を返す。
リヴァイさんのコートを掴む、だって、まだ言ってない。

『リヴァイさん、お誕生日おめでとうございます』

「ああ、ありがとうな」


リヴァイさんは少し考えて、私体を引き寄せた。そして、そっと触れるだけのキスを私にした。

突然の出来事に恥ずかしくてリヴァイさんを真っ直ぐ見れないでいるとリヴァイさんは鼻で笑った。ひどい。

「また、必ず来るから」

『…はい。』

「そんな顔すんなよ。帰りにくいだろ」

『…リヴァイさんすきです』

「さっき聞いた」

『…お店で待ってますね』

「ああ、じゃあ、またな。」

リヴァイさんが小さくなっていくのを見つめる。

今日は何が起きたのか頭の中で整理しようとしたけど、意識が唇にいってしかたがない。

『リヴァイさん…』

自分の唇に触れながら呟いた言葉は冬の空に消えていった。



end.


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