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加速しだした私の気持ち



――木曜日

ソワソワしている。起きた瞬間から。
嘘、リヴァイさんからお手紙を貰った日から。何度も何度も読み直して、リヴァイの名前を指でなぞった。その度に顔がにやけてしまう。

迎えに来るってことは、どこかへ行くのかな。だったらそれなりの服装じゃなきゃと思い洋服を漁る。どれがいいのか、これじゃ気合入りすぎだし、これじゃちょっと…そもそもリヴァイさんはどのような格好が好きなのかな。
何度も着ては脱ぎ、着ては脱ぎ、それを繰り返していると母がため息をついた。

「そっちの右の飴色のワンピースにしなさい。ネックレスはこれを貸すから。それなら恥ずかしい格好じゃないわよ。コートは無難に黒ね。はい、決まり。」

母に言われた通りに着てみるとなぜだかしっくりきて、母親すごいとなった。

「デートなんでしょ?やっとナマエにそういう相手がねぇ。死んだ父さんも喜ぶ、いや悲しむか?まあ、いいや。」

なにそれ。





――18時

私はお店の中でリヴァイさんがやってくるのを待つ。お店と家は一緒で一階がお店、二階が住居スペースとなっている。

カランカランッの音と共にリヴァイさんがやってきた。リヴァイさん私の格好を見てつぶやいた。

「…それなら大丈夫だな」

『リヴァイさん?』

「ああ、なんでもねぇ。行くぞ」

コートを羽織り、店の外に出ると馬車が止まっていて、目を丸くした。その馬車に何も説明もせずに乗るリヴァイさん。
あの、私もこれ、乗っていいの…?

馬車の入り口からリヴァイさんは顔を出して

「はやく乗れ」

と言ってくるから、急いで乗った。

馬車の中はこんな風になっているのかとキョロキョロと視線を動かしているとリヴァイさんと目があう。

「馬車ははじめてか?」

『はい…!こんな風になってるんですね、すごい…。』

「これはそんなすごかねぇやつだ。調査兵団のだしな。」

『この馬車調査兵団のなんですか?』

「ああ。エルヴィン…団長がよこした」

『え、なんか申し訳ないです』

「気にするな。あいつが勝手にやったことだしな」


馬車がとまる。

「着いたみてぇだな。」

そう言ってリヴァイさんは先に馬車を降りる。
私も降りようとしたら思いのほか高くて躊躇しているとリヴァイさんが手を出してきから、恐る恐るその手を取った。
初めて触れたリヴァイさんの手は男らしくて、ドキドキした。

『え、ここって…』

「有名なとこらしいな、ここ」

『私みたいな庶民じゃ一生くるのは無理なお店じゃないですか』

そうぼやくとリヴァイさんは鼻で笑った。


「予約したリヴァイだが」

そうリヴァイさんが言うと、コートを預かると言われ、そして奥の部屋へと案内された。

椅子に座り辺りを見渡すと、ここはどう見ても個室だ。
どう頑張ってもこれないと思っていたお店でしかも個室だなんて夢のようだ。しかも、その相手がリヴァイさんだなんて。

「ナマエ」

『はっ、はい!』

「そう緊張するな」

『緊張してるのわかります…?』

リヴァイさんはうなずいた。
このお店に来れたことにはもちろん、リヴァイさんとこのような食事をするという事に緊張しているのだ。

ほんのちょっと前まで時々来るお客さんだったのに、こうやってテーブルを挟んで向かい合ってる。

「個室で誰もいねぇんだから気楽にしろ」

『…が、がんばります』

蝋燭の光が揺らめく。
今日のリヴァイさんは私が知っているいつものリヴァイさんで、この間調査兵団であったリヴァイさんとは違う瞳をしている。

運ばれてきた食事を口にすると、美味しさのあまり感動してしまいそうになる。なにこれ、こんなものがあるの…!
会話はしたりしなかったり。意外とリヴァイさんってお喋りさんだなって思えたり、合間に訪れる沈黙も嫌ではなかった。むしろ心地よかった。

デザートまで頬張っているとリヴァイさんは優しい瞳をわたしに向けている。








―――だめだ。私、リヴァイさんのことが、すき。



このリヴァイさんへの想いは、恋だ。
揺らめく蝋燭の中、私は確信してしまった。
一度想いを確信してしまうと、その想いはスピードを早めて膨らんでいく一方で、この空間がずっと続けばいいなと心の底から思った。

楽しい時間はあっという間で、帰りの時間になってしまった。
リヴァイさんはお会計を済ませ、私は『ごちそうさまでした』としか言えなかった。


帰りの馬車の中リヴァイさんが私に聞いてきた。

「いきなりあんな店に連れてって悪かった。」

『いや、悪かったどころか夢のようですよ!』

「ならよかった。」


降りるときまたリヴァイさんは手を差し出してくれた。心臓がうるさい。

「じゃあ。…また店に行く」

『お待ちしてますね。リヴァイさん今日は本当にありがとうございました。楽しかったです!』

「ああ、俺も楽しかった」

『…あ、リヴァイさん…っ』

馬車に乗ろうとしたリヴァイさんのコートを思わず引っ張る。引っ張った事に何してるんだ自分という気持ちが私を支配する。

『あ、あの…また、お食事、一緒に、行ってくれますか…!』

頑張って絞り出した言葉は途切れ途切れでかっこのいいものではなかった。

「…ああ、もちろん」

リヴァイさんは目を細めて笑った。
初めて見たリヴァイさんの笑い顔にどうしようもなく心がうごく。

「じゃあ、またな」

『はい…!リヴァイさんおやすみなさい!また!』


どうしようドキドキが止まらない。
私、リヴァイさんの事が本当に好きみたいだ。



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