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芳醇な香りと高鳴る鼓動


二、三日したらくるとリヴァイさんは言った。
あれから三日目。太陽の位置は低くなり空はオレンジ色に染まっている。そのうち暗闇が訪れる。喫茶店なうちの店は夕方で店仕舞いだ。

『リヴァイさん…やっぱこないかあ…。』

お店の中に私の独り言が吸い込まれる。店は後片付けをして帰るだけ。



―――カランカランッ

扉のベルがなった。
もしかして!と思って入り口を見るとそこにはリヴァイさんの姿があった。

「わりぃ、遅くなっちまった」

『いえ、大丈夫ですよ。』

「これ、例の」

そういってリヴァイさんは持っていたバスケットを私に渡した。それを受け取り中を確認すると、明らかにパウンドケーキを作るには多い量のバターが入っていた。

『こんなに受けとれません!』

「どれだけ必要だか分からなかったから多目に持ってきた」

『必要な分以外はお返しします…。』

「いや、返されても困るから受け取ってくれ。」

『ええ、でも…。』

「受け取ってくれ。頼む」

リヴァイさんの視線と私の視線が絡む。恥ずかしくなって、はい、と言うしかなかった。

『よかったら、紅茶のまれていきます?』

「もう店は仕舞いじゃないのか」

『…バターのお礼です』

そういうとリヴァイさんはカウンター席についた。
私はカウンターの中に入り、リヴァイさんの為に紅茶を淹れる。紅茶の香りがふわっと香る。

『どうぞ』

リヴァイさんが紅茶を口にするのを見ると、私は頂いたバターが入ったバスケットを手に取る。
バターの芳醇な香りがする。見るからに上質なバターでリヴァイさんはどこでこんなものを、しかもこんなに大量に手に入れたのだろうか。気になるけど、リヴァイさんが話さないなら聞かない方がいいと思ってぐっとこらえた。

「それは、いいバターなのか」

『ええ、すっごくいいバターです。美味しいパウンドケーキ作りますね』

「ああ…その事なんだが、当日どうしても取りにこれなくなった。前日も無理で…悪いんだが、届けて貰う事って出来るか?」

『…金曜日でしたよね?金曜日でしたら母もいるので大丈夫です』

「すまねぇな。ちゃんと御代は出す。」

『いや御代は結構ですよ。だってバターあんなに貰いましたし!』


リヴァイさんに会えるなら、届けていいかなって思えて承諾してしまった。それに届ける御代よりも絶対バターのが高いもの。


『あ、ちなみにどこに届ければいいんでしょうか?』

「…調査兵団本部、だ。」

『調査兵団本部…ってあの調査兵団本部ですか?』

「ああ」

『分かりました。』

「当日来客リストにナマエの名前を書いておくから、門番に俺の名前とお前の名前を言えば入れるようにしておく。それと、これパウンドケーキ代、先に払っておく。」

『あ、ありがとうございます』

「…正午過ぎに届けてくれると助かる。ちっ、時間だ。わりぃが頼むな」

『いえ、こちらこそよろしくお願いします』

席を立ち、入り口へと向かうリヴァイさんのお見送りをする。
その姿が見えなくなるまで後ろ姿を見つめていた。

調査兵団のリヴァイさん…もしかして、リヴァイさんはあの人類最強のリヴァイさんなのかな。
いや、でも、人類最強の人がうちの店になんか来ないよね。
きっと同じ名前の人だよね。



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