真っ直ぐな目で
「帰っていたのか」
ミケの、私室のベッドで眠るナマエに、向かって呟いた。
鼻をすんっと慣らせば部屋にナマエの匂いが充満していてすごく落ち着いた。
『わたし、ミケ分隊長の事がすきです。』
真っ直ぐな目でそう言われたのが遠い昔のようだと、眠るナマエを見つめながらミケは懐かしむ。
歳も離れていて、少し危なっかしいナマエを可愛がっていたのは事実だ。だがそのナマエがミケに異性への愛を持っていただなんてミケは一ミリとも気づいてなかった。
みんなでワイワイ騒ぐタイプではない。物事を考えてから動き、暇ができれば本を読んでいて、かと、いって同期や先輩とも仲は良かった。不思議な人柄だと思った。
だから、ナマエに告白されたときは驚いた。一人の人間として、男として好かれているなど思いもなかったからだ。
返答に悩むミケをよそにナマエは『絶対に好きにさせてみます。だから、お付き合いをしてください』と言われ、その自信に笑ってしまった。そして、同時に「わかった」と、口が動いていた。
ああ、懐かしいなと、ミケは寝顔をみつめている。ミケの気配に気付いたのこナマエはモゾモゾと動きます薄目をあけた。
『ミケ…おかえりなさい…』
「ただいま」
『一緒に、寝、よ』
「わかった」
今ではナマエがいないと、自分がダメになってしまうではないかと思いを張り巡らすほどミケはナマエに惚れている。
きっと、あの真っ直ぐな目で見つめられたときから。
おかえりなさい