いたずらっぽく微笑んだ
「エルヴィンさん、おかえりなさい」
玄関へパタパタという可愛らしい足音が聞こえてきそうな急ぎ足でエルヴィンを迎えるのは、エルヴィンの最愛のナマエだ。
普段の冷静沈着で鬼のようなエルヴィンからは想像ができない笑顔でナマエをだきしめる。ナマエもぎゅうっとエルヴィンの背中に腕をまわし、エルヴィンの帰りを歓迎する。
ナマエとエルヴィンが会うのは実に1ヶ月ぶりだ。積もる話もあるだろう、その話を埋めるかのように唇を交わす。
ナマエは一番安全な壁の中で暮らしている。婚姻関係ではない。だが、エルヴィンにとって最愛の人は間違いなくナマエで、ナマエにとっての最愛の人はエルヴィンだ。
調査兵団、第13代団長という立場である彼はしばられたくなかったのだ。だが、本人は自覚はないがもう既に縛られている、最愛のナマエに。
婚姻関係など、関係なかったのだ。愛している、それだけでエルヴィンは充分に縛られいるのだ。
団服を脱ぎ部屋着に着替えてソファーでくつろぐエルヴィンにひっつくように隣にすわる。
エルヴィンは目をほそめる。
『エルヴィンさん、エルヴィンさん』
エルヴィンの名を呼びながらナマエはふふふっと笑う。久々に会ったのだからかまってほしくてしょうがないのだ。ナマエの手の平をとり、唇を落とす。
「…すきだ」
『私もだいすき』
「あんまり帰ってこれなくてすまないな」
『ふふふ、団長だもの、しょうがない。そんなつまらない事よりもこうしてよう?』
エルヴィンにキスをし、いたずらっぽく微笑んだ。
おかえりなさい