扉がバタリと閉まる音がした。それは兵長が部屋から出ていってしまった音だと気付いたのは、少ししてからだった。
涙がとまらない。
なんで喧嘩なんかしてしまったのだろう。そもそも喧嘩するつもりなんかじゃなかった。ちょっとふざけていただけなのにいつの間にか言い争いになって、私は泣いていて、兵長は部屋を出ていった。
『っ、…へいっ、ちょ、う……』
兵長の名前を呼んでも兵長が現れる訳もなかった。
きっと呆れられた。だから兵長は部屋を出ていったんだ。
そもそも私が好きで好きで大好きで頑張って兵長に告白して、だめでそれでも兵長への想いを諦めれなくて後日泣きながらすがるように兵長に告白をまたしたの。
ため息をつかれ呆れられたような顔をしていて、ああ、まただめだと絶望に落ちそうになった。と、思ったら兵長は「お前の事好きにさせてみろ。なら、付き合ってやる。」と相変わらずな口調で淡々と返事を貰えて、涙が止まらなかった。
そんな告白から始まり、私と兵長は順調にお付き合いをしている。
涙がようやく止まったかと思ったけど、兵長の顔を思い出すとまた涙が溢れだしてきた。
もう兵長とは終わりなのかな。でもしょうがないよ、だって私がこんなんなんだもん。
ガチャリと扉が開いた。
ぼやける視界の中に兵長の姿が見える。
「まだ泣いてんのかナマエ」
『へいっ、へいちょ、なんで…っ』
「なんでって、落ち着く為に紅茶でも淹れるから待ってろと言っただろうが」
…覚えてない。それとも私が聞いていなかったのか、自分の愚かさに更に涙が溢れてくる。
「ったく、泣いてて聞いてなかったんだろ」
兵長はしゃがみこんで私の目尻に溜まる涙を、ハンカチで拭ってくれた。
「……落ち着いたか?」
しばらくして兵長は私に聞いてきた。コクンと頷くことしか出来なくて、そしたら兵長は私の頭をよしよしと撫でてくれた。
『…兵長、私の事呆れたのかなって思ったら涙がとまらなくて』
なんで更に泣いてるのかと問われたから正直に答えたら兵長は鼻で笑った。
「お前は馬鹿か」
『どうせ馬鹿ですよ』
「お前みてぇなめんどくさいやつを躾れんのは俺ぐらいだろ」
『…躾』
「不満か?」
『不満じゃないけど、そこは愛の言葉聞きたかったです』
兵長はまた鼻で笑った。
「夜、聞かせてやるよ」
耳元で囁かれて、心臓がドキドキした。
愛の言葉は夜に