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『ミケ分隊長!』

「…」

『分隊長無視ですか!』

「…そこにいたのか。小さくて見えなかった」

『絶対見えてたじゃないですか!あからさまな嘘よくない!です!』



ミケ分隊長はなぜにか私にイジワルだ。確かに私はミケ分隊長からしたら小さいけれど平均的な大きさであるし、いくら小さかったとしても視界に入らなかっただなんて絶対にありえない。
でも、こうやってくだらないことで遊んでくれる分隊長が好き、楽しいし心が暖まるような感覚になる。

人類最強と呼ばれるもはや存在そのものがチートのようなリヴァイ兵長を除けばミケ分隊の実力はトップだし、言葉数は少ないけれど班員思いで優しくて、なによりミケ分隊長の瞳はとても優しい。
私はミケ分隊長が好きなのだ。そう、好きなの、上官としてだけじゃなくて。


「またミケはナマエのことからかって」

『ナナバさーん』

「おーよしよし。いいこだねナマエ」

「別に、そんなつもりじゃ」


ナナバさーんと泣きつくように抱きつく。ナナバさんは笑いながら私の背中を撫でてくれる。
ナナバさんはこんなにも優しくてかっこよくて綺麗で大好きな先輩だ。男だったら絶対惚れていると思う。…いや、でも、もしナナバさんが男だったとしても私はきっとミケ分隊長の事が好きだと思う。そうでありたい。


「ミケ。あんまりいじわるばっかするとナマエに嫌われちゃうよ」

『ナナバさんイケメン発言!』

「…ナマエは俺が嫌いか?」

『え!嫌いなわけないじゃないですか!むしろ大好きですよ、ミケ分隊長!』


嫌いかなんて聞かれて思わず大好きだと言ってしまった。恥ずかしい!

ミケ分隊長は表情ひとつ変えないし、なにも言わない。なにこれ私一人で恥ずかしくなってるじゃないですか。


「ミケよかったね」


ナナバさんがきれいに笑った。
これが日常だ。すごく楽しい。











「ナマエきいた?」

『何をですナナバさん』

「ミケに縁談きてるらしいよ。ミケを婿に貰いたいだなんて変わり者もいるもんだね」

『え…』

「大口の出資元のお嬢さんらしいからミケ断るの難しいかもね。……ナマエいいの?」

『え、なにがです…?』

「ナマエがいいなら良いけど」


ミケ分隊長の執務室でナナバさんとお茶をしていたら、唐突にミケ分隊長に縁談がきているというお話をされて思考回路がついていかない。
さっきまで美味しく感じていた紅茶の味が美味しく感じれなくなって、カップの半分もある紅茶をただ眺めることしかできなかった。


「ミケおかえり」

『お、おかえりなさい』


扉が開くとミケ分隊長が戻ってきて向かい側に座るナナバさんの横に腰をおろした。
ナナバさんがミケ分隊長の分の紅茶淹れると、ナナバさんは私を一瞬見てたちあがった。


「私ゲルガー探しに行ってくるから」

『いってらっしゃいナナバさん』


ナナバさんは去って行った。
ミケ分隊長と二人っきり。いつもなら嬉しくて心臓がドキドキするのに今日は全くしない。するどころか心臓が止まってしまいそうなぐらい心が痛い。



「飲まないのか」

『えっ、あ、さ、冷めちゃったので…』

「…ナマエ」

『な、なんでしょう…』

「お前は……いや、なんでもない」


この時ミケ分隊長が何を言いかけたのかだなんて私は気付かなくて、自分のことでいっぱいいっぱいだった。










ミケ分隊長に提出しなくてはいけない書類を忘れていてたから時間も遅いが執務室に届けにいった。どうせこの時間はミケ分隊長はいないだろうし、机の上にでも置いて置けば明日の朝ミケ分隊長が確認してくれるだろう。


『失礼します』

扉を開ける時、癖で言ってしまった。執務室には誰もいないだろうに。




「こんな時間にどうした」

『ミ、ミケ分隊長こそ…!こんな時間まで何しているんですか!』

「面倒な書類がやっと終わったから、酒を空けているところだ」

『飲みすぎはだめですよ?』

「わかってる……ナマエも飲むか?」

『いいんですか?じゃあちょっとだけいただきます』


ミケ分隊長の横に腰をおろすとお酒を注いでくれて、上官に酌をさせるだなんてだめな部下だなと思いながら口に運ぶ。


『美味しい。ゲルガーさんほどではないけどやっぱりお酒はいいですね』


久々のアルコールに気分があがり、ミケ分隊長に向かって微笑むと、あのミケ分隊長も少し表情を崩し笑っていた。
滅多に見れることのないその顔に私の心臓はドキドキと主張しだした。




「……ナマエは俺の事が嫌いか?」

『ど、どうしたんです?』

「嫌いか?」

『嫌いなわけないじゃないですか。』

「俺に縁談の話がきているのはナナバから聞いただろ」

『…ききました。お承けするのですか』

「今の状況なら承けざるえない」



心臓が痛い。
さっきまで嬉しくてドキドキしていたのに、今のドキドキはなんだ。苦しい。

ミケ分隊長が結婚
そりゃ心臓を捧げたからって出来ない訳でもないし、相手が出資者だなんてありえる話…だけど、なんでこんなにも苦しいのだろう。
私がミケ分隊長の横に並ぶだなんて事はありえないのに……好きだよ、大好きだよ。でも側にいれてこうやって可愛がって貰えるだけで私は良かったのに、いつから私はそれ以上を望んでいたんだろう。



「ナマエは好きなやついるのか」

『…いま、す』

「…そうか。」


好きな人に好きな人がいるのかと聞かれるのはなんでこんなにも恥ずかしくて気まずくなってしまうのだろう。

ミケ分隊長、あなたです、私の好きな人は。
そう言えたらどんなに楽だろうか。
言えたところです叶わぬ恋なのだけれど。


「…俺の好きなやつは、好きなやつがいるらしい。…叶わない恋なら、俺はどうやら縁談を承けた方がいいらしい」


ミケ分隊長は遠くを見ながら静かに言った。
ああ、分隊長好きな人いるんだ。私もう失恋したも同然じゃん。失恋覚悟で想いを伝える勇気なんて私にはない。


『……ミケ分隊長の幸せが一番だと思います』

「幸せ、か。」


なぜそんなことを言ってしまったのかはわからなかった。

ミケ分隊長はそれから黙ってお酒を飲み続けた。
私もそれなりのペースで飲み続けていつもなら酔ってしまうぐらいは飲んでいるのに全く酔いがまわらない。


『分隊長……眠いならお部屋行きます?』


ちらっと横を見ると分隊長が眠たそうにしている。執務室なんかで寝たら風邪を引いてしまうだろうから自室に帰ることを促すと、ミケ分隊長はうなずいた。

少し足もとが覚束無いミケ分隊長の後ろをついていき、部屋の扉の前で『では、』と言おうとした瞬間私の腕は引っ張られ一緒に部屋に入った。
壁に背中を押し付けられて、目の前にミケ分隊長が私を見下ろすようにいてどうしたらいいのかわからなく困っていると、ずっと黙ったままだったミケ分隊長は口を開いた。


「酒のせいだ」


次の瞬間ミケ分隊長の顔が近づいてきて思わず顔を横に反らしてしまうと、ミケ分隊長の唇が私の頬に触れて、お髭がちくちくとこそばゆくて思わず声がでた。

顎を捕まれ、あの目で真っ直ぐ見つめられて、時が止まったような気がした。
思考回路が働かなくなって、今ごろお酒がまわってきたのかと思うぐらい体が熱い。

重なりあう唇、私の衣服の下から確認するように体を撫でる大きな手
……そう、これはお酒のせいなんだ。



ベッドに移動して互いを貪り尽くすように舌を絡め、大きな手が私の頬を撫で、私はどんどん疼いて、ミケ分隊長と何をしているのかわからなくなっている。

いつの間に衣服は脱ぎ捨てられ、ミケ分隊長の唇が私の体を触れまわり、あの大きな手がついにソコに触れられ厭らしい音が聞こえてきて羞恥心が掻き立てられる。

私のナカをかき回していた指がぬかれたと思ったら、さっきよりも大きなモノが私のナカに入ってきた。

身も心もぐっちゃぐちゃで、このままミケ分隊長とひとつに溶け合ってしまいたい。

嬉しいはずなのになぜか切なくて本当にこのまま時が止まってしまえばいいのに。








翌朝起きると自分の部屋にいて、あれは夢だったのかと考えたけれど、体に残る赤い印が夢ではないことを示していた。


あれからミケ分隊長は何も変わらなかった。体を重ねたのなんか嘘のような毎日を過ごしている。それが逆に苦しかった。
やっぱりあれは夢だったのかと思う度に赤い印を見ていたけれど、もう、赤い印はほとんど消えてしまっている。



そして今、ミケ分隊長にあの時のように腕を引っ張られて執務室に連れられた。
同じように壁に背中を押し付けられて、でもあの時とは違って二人とも素面だ。


「ナマエは俺の事が嫌いか」


真っ直ぐ見つめられて私も真っ直ぐ見つめ返した。


『……ミケ分隊長は私のこと好きですか』


質問に質問で返すと、ミケ分隊長は少し笑い、唇と唇が重なった。


幸せはあなたから



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