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悔しかった。女だからっていつもジャンは馬鹿にしてくる。
でもジャンだってミカサには勝てないじゃん。馬鹿。
ていうかそうやって女だからって馬鹿にするけどミカサに惚れてるじゃん。意味わからないよ。



一生懸命訓練だってしている。遅れをとらないように自主練習だってしてる。それでも成績優秀だなんて言えない程度だけど、力が足りないなら鍛えればいい。それでも足らなければ座学をのばせばいい。だからジャンなんかより頭はいいもん。
どうしても足らないなら違うもので補うしかない。



「まーたジャンと喧嘩したのかナマエ」

『喧嘩じゃないもん、ジャンが勝手にいちゃもんつけてくるんだもん…きらいジャンなんか』

「そう落ち込むなよ。」

『ライナーは体も大きいし力も強い。なにより男の子じゃん、うらやましい』

「それは生まれつきだから羨ましいと言われても困るな…」

『…そうだよね、ごめん』


裏庭で一人で悔し涙を我慢していると、いつもライナーはやってくる。
地べたに三角座りして唇を噛みしめているのを何度も見られるのは気まずいけれど、ライナーはそれを全く気にしなくて。いつも隣で胡座をかいている。

最初は少し邪魔くさかった。でも、今はライナーが居てくれると安心する。



『ライナー』

「なんだ」

『ありがとう、いつも』

「別にお礼言われるような事なんかしてねえよ」

『…ちょっと、こうしててもいい?』

「ああ、構わない」


隣に座るライナーとの距離をつめて、ライナーにもたれ掛かるように身体を預ける。触れているところから私とは違う体温が感じれる。


私は、多分、ライナーの優しさに甘えているだけなんだと思う。
普通だったら好きになっちゃうのかな、こんな風に優しくされたら。



『ねえ、ライナー』

「ん?」

『ライナーはさ、クリスタとどこまでいったの』

「いや、どこもこうねえよ」

『あれ、まだ好きって言ってないの?』

「言うわけないだろ。確かにクリスタは女神みたいで可愛いし優しいし、結婚したいとか思うけどそれは、なんつったらいいんだか。憧れみたいなもんだよ」

『ふうん』

「ふうん、て。おい。聞いておきながらなんだよそれ」

『素直な感想だよ』

「ナマエ、もしかして」

『なに?』

「俺がお前のこと好きなの気付いてないのか」

『…薄々は』

「薄々かよ」

『だってクリスタのこと可愛い可愛い言ってるから…』

「まあ、それは悪いと思ってる」

『そっか』

「そっかって」

『…ねえ、ライナー。私正直好きだとか恋とかよくわかんないんだ。でもこうやってる時間はすごく安心するよ』

「そうか」

『そうかって』

「ナマエの真似だ」

『…もう少しだけこのままでいていい?』

「ああ」


ライナーは真っ直ぐ前を見つめていた。私はライナーの体温を感じながら目を瞑った。 ライナーの腕が私の肩に回った。
ライナーの腕はがっしりしていて力強かった。なんなら、もたれ掛かっている身体だってがっしりしている。


きっともっと私が強かったらライナーのことを大好きになっていると思う。
女に生まれたというコンプレックスは消えない。兵士になるのに女らしい体なんかいらない。膨らんだ胸なんて邪魔なだけだ。たいしてのびなかった身長だって。

でも、いつの日かライナーの気持ちに応えれるようになりたい。



蕾のままの恋


(慰めてもらうシリーズ第三段)




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