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そろそろ時間か…と、ミケは重たい腰をあげる
気の進まない足を無理矢理進めエルヴィンの私室へと向かう。

私室の扉を3回テンポよく叩くと返事はなかった。

まだ終わっていなかったのか…すぐさま投げ出して帰りたくなった。
その瞬間、扉が開き姿を見せたのはエルヴィンで、エルヴィンは後は頼んだと言い残し去っていた。

部屋に入ると男と女が交わったあとの匂いが充満し、鼻のいいミケはしかめっ面になった。
どうせだったらナマエの匂いだけを嗅いでいたい、そう思いながら。



ベッドの上で薄いシーツをかぶりながらナマエは意識朦朧としていた。


「ナマエ、起きろ」

『……ん、ミケ?』

「そうだ。風呂へ行くぞ」


なぜに俺がエルヴィンの情事後の処理を、ナマエの世話をしなくてはいけないのか。それは俺がナマエを好きだからだろう、それを分かっているからこそエルヴィンは俺に頼んでいる。

このおかしな関係ももう年単位に突入だ。思わずミケは鼻で笑った。

慣れとは怖いものでナマエも最初は恥ずかしがっていたが今では羞恥心という概念がどこかに消えてしまったようだ。

エルヴィンは情事後のナマエの世話をしながらそのままミケがナマエの身体を貪り尽くす事を期待している。一つの情事の遊びとして。だがミケもそれを理解しているのか決してナマエには手を出さない。出したくないというのが正解だった。他の男の匂いで満ちた女を抱きたくはなかったのだ。
意思と欲望は別だが。


風呂に入れさせ終わると、ミケは自分の部屋へとナマエを連れていった。これ以上あの匂いが充満する部屋にいたくなかったから。
力のないナマエの髪を拭いてやっているとナマエは口をひらいた。


『ミケ……いつもごめんね』

「気にするな。俺はエルヴィンの命令に従っているだけだ」

『ごめん』


本当だったらここでナマエを奪ってしまえばいいのだろう。だけどそれをしてしまうとエルヴィンの思う壺になってしまい、それで更に行為を楽します要因になってしまう。だけど風呂場で自分の膣からエルヴィンの欲望を掻き出す姿は厭らしくてミケの脳裏に焼き付いている。



『ミケはさ…どうして私を抱かないの?』


その投げかけられた質問にミケは思わず鼻で笑ってしまった。

「他の男のモノを抱く趣味はない」

『私は確かにエルヴィンの性欲処理だけど、エルヴィンのモノじゃないよ?』

「それでもだ」


ナマエはエルヴィンの補佐官だ。
ナマエは優秀な兵士で、巨人の討伐、討伐補佐数も文句なしの数字だった。だけど、靭帯を損傷して以来壁外へと行くことはなくなった。正しくは行けなくなったのだ。立体機動装置をつけるには耐えきれないのだ。
それでもナマエは調査兵団の役に立ちたいとエルヴィンに掛け合い、事務処理能力をかわれたナマエは団長補佐として調査兵団に残ったのだ。あるいはエルヴィンが手元に置きたかったのか。

補佐官が板についた頃だった。エルヴィンに身体を奪われたのだ。
エルヴィンはこれも補佐官の務めだとナマエに上手く言いくるめ、ナマエもそれに従った。
決して恋人同士ではない、団長の性欲処理として、ナマエはその務めを受け入れた。


「俺は他の男に馴染みきった身体は遠慮する」

自分で言って最低だとミケは思った。だけどそこまで言わないとナマエを拒めないのだ。ナマエは悲しそうな顔をしながら窓を眺めていた。

ナマエはミケからの気持ちに痛くなるほど気付いていた。エルヴィンと身体を交えたあとの世話も本当はされたくなかった。でもエルヴィンはそれを嫌がることを許さなかったのだ。

正直、ナマエはミケの気持ちは嫌ではなかった。ミケの優しさと想いに甘えたかった。エルヴィンと幾ら身体を交えどそれはただの性欲処理でしかなく、心はポッカリと穴が空いたままだから。
だからこそミケの優しさはその穴を少しだけ埋めてくれる。だからと言ってナマエはミケの事を好いてるわけではなかった。

甘えている最低な女なのだと、ナマエは心の中で嘲笑った。
だからミケからの冷たい言葉も許せる、いや、許さなくてはいけない。



「明日も早いんだろ?寝ろ。」

『一人で歩くの、むり』


ミケはため息をついた。またかと。

「部屋まで連れて行くのと、ここで寝るのどっちがいいんだ」

『ここで寝ていいなら寝る。だめなら連れてってもらう』

「わかった」

一言呟いてナマエの身体を持ち上げて、ミケは自分のベッドに寝かした。
そんな風に言われたらするしかないだろ、とため息をついた。


『ミケも一緒にねよ?』

「寝るもなにもベッドはこれしかないからな」

『ごめん…』


ミケもベッドに入る。
ナマエに背を向けて。
ナマエはその背にぴったりと身体をつけてまぶたを閉じた。

翌朝、いつものようにミケに抱き締められているのを期待して。




ぬくもりだけを求めて


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