『ミケさん、居ていいですか…?』
「構わない」
日付が変わる少し前。
私室の扉が2回叩かれる音がした。
誰なのかは、わかっている。扉をあけてやると、そこにはナマエがいた。可愛らしい寝間着をきて。
ナマエはソファーに座ると一言ごめんなさいと謝ってきた。それに特に返事するわけでもなく、自分は机に向かい直し先日の壁外調査に関しての書類を進める。
ナマエはハンジの班員だ。まあ、ハンジとは付き合いが長い訳で自動的にハンジの班員とも面識はできるわけである程度親しくもなる。
ナマエは時々こうやって俺の部屋を訪れる。いつも辛そうな顔をしながら。
別に何かを話すわけでもなくソファーに座っている。気付いたら眠っているし、正直俺には何をしに来ているのか分からないが別に邪魔をされるわけではないし、何よりナマエから香る匂いがとても心地よかった。
この間の壁外調査は珍しく犠牲者も被害も少なく終わった。あくまでも少なくで、犠牲になった者はやはりいる。
…考えるはよそう。今はこの書類を進めなくてはいけない。
やっと終わったと背伸びをする。 ちらっと後ろをみるといつもは寝ているナマエが起きていた。
『おつかれさまです』
「起きていたのか」
『はい』
「なあ、ナマエ。お前は時々なんで俺の部屋に来るんだ」
『…あ、その、ミケさんの、雰囲気、がすきなんです。どうしてもやるせなくなった時ミケさんを見つめていると心が落ち着いて……』
「そうか」
『ご迷惑ですよね…』
「いや、大丈夫だ」
『ただ…起きるといつもミケさんのベッドで寝ているので申し訳なくなります…』
「さすがにソファーでは寝かせれないからな」
『でも、そうするとミケさんが…』
「一晩ぐらいなら寝なくたって大丈夫だから気にするな」
『うう…気にします…いや、私がミケさんのお部屋くるのが行けないんですよね…』
「気にするな。命令だ」
『そう言われてしまうと何も言い返せなくなってしまいます…』
うつむいたナマエの表情はよく見えなくて、彼女が紡いだ言葉を思い出す。
落ち着く、か。
「じゃあ、一緒に寝るか」
『え、あ、いっ、え、ミケさん…?!』
「冗談だ。本気にするな」
あからさまに照れるナマエに思わず口角があがる。こんな反応をする女は久々だ。
『ミケさんも冗談とか言うんですね…』
「まあ、それなりにな」
またうつむいてしまったナマエの耳は赤かった。
部屋にやってきた時みたいに辛そうな顔を、今はしてはいないようで安心した。
落ち着く背中
(慰めてもらうシリーズ第一弾)