気分が酷く悪い。壁外調査を終えたあとはいつもこうだ。
初めて壁外調査へ行ったのはいつだっけ。もう何回目の壁外調査なのか数えるをやめた。初めて目の前で巨人に食べられた仲間。辺りが真っ赤になって血生臭くて、巨人の口から垂れ落ちた足はかつて私を指導してくれた先輩だったもの。そこらに散らばる残骸は同期で一緒に頑張った友で、親友で、思い出すのはやめよう。呼吸が苦しい。
ガチャッと、扉が開く音がする。私が今いる部屋はリヴァイの私室で、その私室に自由に出入りするのはこの部屋の持ち主であるリヴァイだ。つまり、部屋に入ってきてのはリヴァイで、私の様子を見や否や顔をしかめた。
「なんてツラしてるんだナマエ」
『あーおかえりなさい、リヴァイ』
「また、か」
『ごめんね』
リヴァイはそっと私を優しく抱き締めた。リヴァイの首筋に顔を埋める。少しひんやりするリヴァイの体温はとても気持ちよい。
「なあ」
『なに?』
「そんな顔するな」
リヴァイに抱き締められてるから顔見えないはずなのにな。リヴァイはずるい。
リヴァイの首筋が私の瞳から流れる雫でぬらす。
リヴァイはそっとその体を離すと、私の涙から流れる雫を唇で拭った。
『ねえ、リヴァイ』
「なんだ」
『つらい』
「ああ」
『きつい』
「ああ」
『楽になりたい』
「そうか」
『でも、死にたくない』
相変わらず私の瞳からは雫がたれる。
『リヴァイ、ねえ、リヴァイ。どうせ死ぬならリヴァイに殺されたい』
リヴァイは表情を崩さず私を真っ直ぐみつめる。
『もういやだ。こんな弱い自分がいやだ。未だに初めての壁外調査を思い出してこんな風になる自分がいやだ。こんな気持ちで調査兵団に所属しているのも嫌だ。でもリヴァイと一緒にいたい。最後この目で見るのはリヴァイがいい』
リヴァイは私の髪の毛を指で鋤くように頭をなでる。
「それがお前の選択か」
『…ん、』
うん、という前にリヴァイは私の唇をふさぐ。
「なら、お前を殺してやる」
『…うん』
「だがな、まだ俺と一緒にいろ。まだ俺はお前といたいんだ。お前をこの手で殺めるとき辛い気持ちでいっぱいになりてえ、お前が一生俺の中で残るように。お前の最期を見るのはおれだ。お前の最期はおれだ。わかったか」
『リヴァイ…ありがとう』
重なる唇は約束の証