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『兵長、すき』

「ああ、」

『兵長、すきです』

「…」

『兵長…好きなんです。』


なぜにか酔っぱらったナマエによる愛の告白大会が開催されている。

いつもの冷静沈着なナマエからは想像もできないぐらい甘えてきて、今現在ナマエは俺の膝の上に跨ぐように座り、向き合っている。
いつもは酔う事すらしないナマエが酔ってる姿は面白くてついつい見ていたらこんな状態だ。


ナマエは冷静沈着、がとても似合う女だ。
いつも淡々と喋り、笑う顔も滅多に見せない。 巨人を削ぐ時だってあの顔のままだ。
エルヴィンの片腕として色んな雑務をこなし、嫌な顔1つ見せずにすげぇなとは思っていたが、そのナマエが今こんな風に甘えてきて、子供みたいに好き好き言ってくるのがまじで面白れぇ。


正直ナマエの事は嫌いじゃない。どちらかと言えば好きだ。でもそれは女としてではなく、兵士としてだ。………と思う。



『兵長は、私の事、すきですか』

「…」

『へいちょ…、私は、すきです…』

「ナマエ」

『なん、ですか』


にへらとナマエは笑った。こんな顔をするナマエが 可愛く見えて、少しだけ口元が緩んだ。


『兵長、私ね、兵長がすきなんです』

「それは何回も聞いたぞ」

『はじめて兵長見た時に、ね。すごい無愛想な、人だと思いました……でも、無愛想じゃなくて、不器用なんだな、って』

「…」

『気付いたら、兵長のことばっか、』


俺の首元に顔を埋めてながら俺の背中に腕をまわしてくる。
思わずナマエの頭を撫でてやると、背中の腕にさらに力が入った。


『兵長、結婚、してください』

お付き合いを通り越してプロポーズされて笑いそうになった。ナマエはそんなに俺の事が好きか、そうかそうか。

正直悪くないと思ってる自分がいた。




朝、目が覚めるとそこは自分の部屋ではないことに気づいた。
昨日私何してったんだっけ。ああ、そうだ。昨日はついつい飲んでしまって酔って……そこから記憶にない。

ここはどこだと部屋を見回すと見覚えがあった。
頑張って掃除をしている私の部屋なんかよりずっと綺麗で…まぎれもなく兵長の執務室だ。
なぜ私は執務室にいるのだろうか。もしかして酔って兵長に介抱してもらったのだろうか。だとしたら合わす顔がない。

「起きたのか」

『あ、おはようございます。私昨日の記憶が…』

「だろうな」

兵長に鼻で笑われた。
え、地味にショックだ。誰だって好きな人に鼻で笑われたらショックでしょ。

いつのまにか兵長が好きだった。気付いたら兵長のことでいっぱいいっぱいだった。
だけどこの気持ちを気付かれてはいけないと思った。私はただの兵士。兵長は人類最強と揶揄され、いや、実際に最強なんだけど、手が届くわけないと思い、この想いをすぐしまいこんだ。

そのかわり訓練、任務、壁外調査、何事も全力で取りくんだ。
そしたら同期が簡単に数えれる程度しかいなくなって、先輩もいなくなって、お世話になったあの人もあんまり好きじゃなかったあの人もいなくなった。

そしていつの間にかエルヴィン団長の片腕と言われるまで成長できた。しかし団長の直属の部下でいると大変なことだらけだ。でも、正直やりがいがある。

そしてどんどん兵長に想いを伝える事ができなくなってしまった。


『私、なにか兵長にご迷惑をかけていませんでしょうか…』

「迷惑とは思わないが、すごく面白かったぞ」

『え、』

「ナマエ、」

『な、なんでしょうか…』

「昨日の返事を教えてやろう」

『え、あ、は…ッ!』


そう言って兵長は私の体を持ち上げた。
え、なにしてるの兵長!顔赤くなってないよね、大丈夫だよね。そしてまさかの兵長の膝の上に座らされて脳内大パニック


『へ、ちょ…な、に、を!』

「お前は昨日こうやってずっと俺の膝に座っていたんだぞ」

『え、…う、そ』

「そして、ナマエ、お前は俺に結婚してくれと、言った」


頭が真っ白だ。うそでしょ?しかもプロポーズ?え、あ、嘘?酔った私何してるの。


「面白いから結婚してやるよ」

『……………はい?』

「但し、また酔ったお前が見れたらな」


もう一度あの顔がみたい


とりあえず、意味がわからない。
意味が、わからないけど、兵長の顔が近づいてきてるのだけ分かった。

end.


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