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昨晩は眠れなかった
正確には昨晩も、だ。

3週間と5日前に初めての壁外調査があった
ともに挫け励まし合い時に喧嘩もした訓練生時代からの仲間が何人いなくなったんだろう。
そして私はなぜここにいるのだろうか。答えは1つ心臓を捧げる為だ。



目を瞑ると蘇る悪夢
あれから私はほとんど眠れなくなった。

眠れなくなると不思議なもので集中力が散漫し、直ぐに疲れてしまう。調査兵団の一員としてこんなんじゃダメだと気合いだけで乗り越えた。
そう乗り越えていたはずだった。



「起きたか」

気付いたら見覚えのあるような無いような天井が視界に広がった
そして私がベッドの上で寝ていたのだと気づく。

いや、まって。さっきの声って、もしかしてもしかして。



『…ッ!リヴァイ兵士長!』

無理矢理上半身を起こして敬礼の体勢になろうとするが、できない。
体が痛いのだ。

「動くな。
お前は今日立体起動の訓練中にいきなり意識を失って体をぶつけた。それはもうすごい音をしてな」

あーそりゃこんなに体痛いわけですね。

しかしなぜリヴァイ兵士長がここに?
新兵の私と兵士長の接点はほぼゼロなはずだ。


「なんであんな簡単な事もできねぇ」

『………』

「お前は巨人の餌になりたいのか?」


厳しい言葉だった。私は巨人の餌になんかなりたくない。
その瞬間、食われた友を思い出す。


『……初めての壁外調査以来眠れないのです』

そうポロッと溢してしまった。きっとまた兵士長に厳しい言葉を突きつけられてしまう



「……なら、しょうがねぇな…」


兵士長は少し目を反らして遠いところをみていた。
そりゃそうだ。兵士長のが壁外調査の数が多い。なら亡くなった仲間の数なんてケタ違いだ。

私はやっぱり調査兵団の団員と胸をはって言えない。
たかが1回の壁外調査でこのざまだ。笑いたくても笑えやしない。



「眠れねぇのはつらいよな」

『…はい』

「どうせお前は1週間は安静にするようだ医療班が言っていた」

『1週間も…』

「お前がなんで眠れなくなったのかは何となくわかる。だがな、それは巨人に食われたお前の仲間が喜ぶか?こんなとこで挫けて喜ぶか?……それを忘れるな」



突き刺さるような言葉だ。まさに心臓がえぐられるとはこの言葉だ。
だけど、兵士長なりの精一杯の優しさなんだろう。こんな新兵の私に付き添っていただけるだけで身に余る思いなのに、こうやって私を励ましてくれるなんて。


「俺はそろそろ戻る」

『ありがとうございました』

「手が空いてたのが俺だけだっただけだ」


そう言って座ってた椅子からたちがった兵士長はそのまま出入口にむかった
扉の手をかけた瞬間



「お前、名前は何て言うんだ」


『ナマエ・ミョージです!』

「ナマエ…か。」

そう私の名前を呟くと兵士長は扉をしめて去っていった。足音がどんどん遠退いていく。


私ははやく怪我を治して兵士長にちゃんとお礼を言わなくてはいけない。
そんなことを思いながら目をつぶる。不思議なことに悪夢が浮かんでこない。

今晩は、眠れそうな気がする。


end.

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