気付けば不良
bookmark


私の人生は全くもって普通に始まってはくれないみたいだ。
この世界での産みの親に捨てられかれこれ四年が経った。漸く肉体年齢が二桁になった頃。私は何度となく誘拐未遂をされていた。
理由は簡単。親に捨てられた原因たるこの赤毛がこの世界では珍しいらしい。
私にとっては今迄の経歴上頭髪なんて正直何の色だろうと驚きはしないが、この狭い世界では価値があるらしい。
もの珍しさに人買いに売って動物園の動物宜しく観賞される人生を送らされる訳だ。
確かにその方が今より裕福には暮らせるけども、自由のない生活は私には魅力的ではなかった。

気付けば不良

「カノン、また財布盗ったのか?」

「まぁね、でも先に手を出して来たのはあの人達だよ」

今日も誘拐犯と対峙した私は上手く立ち回ってその犯人の財布をスッたのだ。うん、これでも前世は盗賊紛いな事やってたし、忍だってやってたんだ。手先は器用だから仕方ない。
私の返事に声を掛けて来た目付きの悪い少年は、ニヤリと笑う。

「別に咎めちゃいねぇよ。上出来だっつうの。これで暫く飯に困らない」

「やった!なら今日こそお肉食べてみたいな」

彼に誉められた事実が嬉しくて、つい調子にのってみたら、ペシリとおでこを叩かれた。

「この金はどうしても飯にありつけない時に使う。あんま贅沢したら他の奴に飯が回らないだろ」

「分かってるよ。私だってリヴァイよりは年下だけどあの子達よりお姉さんだからね」

あの日に会った目付きの悪い少年は、今では私にとって家族同然になっていた。彼も当初は親を失ったばかりでゴロツキ相手にケンカして食料を調達していた。
だから私を助けたのは自分と同じだと思ったからだそうで、子供じゃなければ助けなかったとか。
本当にリヴァイは良いお兄さんだ。
だから私はリヴァイに直ぐ懐いた。私の髪を見ても軽蔑しないし、寧ろ同等に扱ってくれる。

無法地帯に近いこの地下街には同じような子供は多くて、私の他に今では三人の子供が仲間だったりする。
どの子も良い子で、頭が良くてなかなかケンカも強い。でなければ生きていけないからと言うのが最もな理由だけれども。
うん、前世の流星街を思い出す場所なだけにちょっとしんみりしてしまう。
と言ってもあっちのが断然危険だった。だけど、 あの街の住民は全員が誇りを持っていた。外からの敵に対しては容赦しない。時には一人の為に大勢で自爆テロなんてした事もあったなぁ。

そんな事を思い出していたら、突然腰にタックルが!

「わわっ!?」

「カノンちゃん!大丈夫!?ケガは?」

どうやら物思いに耽っていたら、家に着いていたみたいだ。腰に引っ付いて来たのは私の二個下のアウル。

「あはは平気だよ?いつもの事だし、私が負ける訳ないでしょ」

「知ってるけど、心配なもんは仕方ないだろ?それくらい分かれバカカノン」

私が心配させまいと笑って答えれば、次には私の一個下のシェイマスが怒ったように近付いて来た。

「うん、心配してくれてありがとねシェイマス」

そう言えば、照れたのかシェイマスはフンと言ってそっぽを向いてしまった。

「そうだ、今日街でリヴァイを探してる兵士を見掛けたんだけど、大丈夫だった?」

そう言うのは私と同い年のルナだ。彼女もまた去年両親が亡くなって此処に行き着いてしまった子だ。

「…いいや、いつもの不良以外には会わなかったな」

ルナの情報に対しリヴァイは否定の言葉を返していたけど、一瞬肩に力が入ったのを私は見逃さない。
(何か隠してるなぁ)
そう思うも、皆気付いていないみたいだから私はこの場では敢えて何も言わなかった。


「それで、何を言われたの?」

夜になり、そろそろと寝始めた所で昼間の嘘をリヴァイに聞いた。

「お前…」

相変わらずの目付きに睨まれたけど、私は見た目に怯む程ヤワじゃないからヘラりと笑ってリヴァイの剣を殺ぐ。
それを見てはぁ、と息を吐くとリヴァイは話す。

「勧誘だよ、俺の腕を見越してだと」

そう言ったリヴァイは面倒そうな表情のわりに迷っている様にも見えた。
私とリヴァイが会った頃に聞いたが、リヴァイの両親は兵士だったそうだ。父親は調査兵団の分隊長で、母親は憲兵団だった。父親はリヴァイが生まれて直ぐに巨人に殺されている。母親は流行り病にかかって亡くなったらしい。
内地で母親と二人で住んでいたリヴァイは身よりがいなく、結果今の地下街に来たと聞いた。
つまり、血筋は優秀だし、齢13にして大人より強い彼はそれなりに地下街では有名だった。

きっとその兵士はリヴァイの親も知って勧誘してきたのだろう。そして態々勧誘しなければならない位の人員不足を考えるに、恐らくその兵士…

「お父さんの敵をとろうとでも言われたの?」

「どうしてそれっ!」

推測は当たりみたいだ。
何より仲間を大切にするリヴァイは知らなくとも父親が大切なのは分かっていた。だけど、今は私達が居るからと、きっと断るに違いない。

「…リヴァイ、私実は12になったら兵士に志願しようと思ってたんだ」

そう言うと、リヴァイは息を飲んだ。

「皆に会えたのは此処だから嫌いじゃないよ。だけどこれから生きる為にはやっぱり育ち盛りの私達には辛い。兵士ならまだご飯にも困らないし、給与だって少しだけど出る。それならまだ皆を養えると思ったから」

そう理由を言えば、リヴァイはいつもの無表情になり言葉を返してきた。

「ダメだ」

きつめに否定された言葉に、私はどうして、と首を捻る。

「食料の事なら心配するな。俺が兵士になるから、お前はあいつら守れ」
「…言うと思った。仕方ないなぁ」

私が笑うとリヴァイは漸く肩の力を抜いた。

「リヴァイ、一つ約束」
「なんだ」

「兵士になっても、私達は家族なんだから、顔を出しに帰って来て」

笑って言えば、リヴァイはああ、と私の頭を撫でながら頷いてくれた。


prev|next

[戻る]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -